欧米型の証明医療を実践されている
『リー湘南クリニック』李漢栄(医学博士)さんのブログ、
『院長ブログ・異端医師の独り言』より、転載させて貰います。科学が好きだと云うリーさんが、淡々と綴るこのブログは第一級の資料で、貴重な存在です。
貼り付け、開始。
2009年03月31日
証明医療原理主義者 いつから僕が「証明医療の原理主義者」になったのかを思い返してみると、医師一年目ですね。聖路加病院時代、廊下を歩いていると、4~5人の外科の先輩と、整形外科の黒田先生がたむろしていて、呼びとめられた。みんなで、僕が書いたチャート(カルテ)を読んでいて、「リー、なんでこういう診断をした、処方の根拠は、とか」質問され、教科書通りに答えると「それでよし」、「?」。その頃は、気づかなかったが、当時、聖路加のレジデント(病棟医)達は、みな証明医療の原理主義者。アメリカの教科書と日本語の教科書では、書いてあることが異なる(場合が多い)。だから、以来、時間の無駄、日本語教科書を読んでいない(皮膚科をのぞいて)。
2年目、北里大学病院(相模原)時代、一年後輩に YSという「超」証明医療原理主義者がいた。いちいち、「リー先生、○○先生のやり方、おかしくないですか」と聞いてくる。非常に根暗で、苦手なタイプである。YSはあろうことか、ある日外来で、おバカの S講師に質問をぶつけた。「なぜ、膀胱炎で抗生物質1週間も、また、消炎剤と胃薬を処方しなくてはいけないのですか?」、「バカやろー、言われたとおり処方すればいいんだ」と、どやしつけられていました。笑いをこらえるのが大変でしたよ。
2009年04月27日
☆★★お尻の穴に指や棒を入れたことがありますか「若い女性の腹痛を診たら子宮外妊娠(外妊)を疑え」と教わった。診断法は、膣をコルポスコピー(器具の名)で展開し、子宮頚部の下、膣の行き止まり部分を穿刺する。外妊の場合、ここに固まらない血液が貯まる。外妊は、出血多量で死亡することがあるので、緊急手術の対象となる。聖路加病院一年生、当直の外科の先輩がこの検査を施行し、外妊の診断を目撃した。
次善の診断法は、肛門に指を入れ(直腸診)かかる解剖部位に圧痛があるかを調べる、現在は、CTや MRIで、容易に診断できると思うが。
さて、北里病院(相模原)時代、近医で当直のバイトをしていたら、腹痛を訴える若い女性が受診した。何のためらいもなく肛門に指を入れたら、前立腺を触れないので「おや」と新鮮な驚きに浸っていた。次の瞬間、患者の鋭い目線を感じた「この変態、いったい何をするのよ…」。外妊の所見はなく、患者はプリプリ怒って帰っていった、やれやれ。
泌尿器科では、「直腸診」で、前立腺肥大症や前立腺癌を診断するのだが、前立腺の一部を触れ、全体を想像するわけで「盲が像の腹を触り、全体を想像する」に等しい。お尻の穴に超音波プローブという棒を突っ込み、前立腺の大きさを測定する方法があるが、何もお尻の穴に入れなくても、膀胱に尿が貯まっていれば、お臍の下から同じ情報を得られる。うちの患者さん、100%が直腸からの検査は懲り懲りと語る。
前立腺癌に対し「根治的前立腺全的術が無効」と判明した現在*、前立腺生検は必要ない。だから、肛門からの不愉快な検査は必要ない。僕は、直腸診をやめて(2009年現在) 14年、経直腸的超音波検査をやめて 8年になる。
*New Eng. J. of Medicine 347:781, 2002
リー湘南クリニック (2007年2月の記事、短縮)
貼り付け終り。
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