欧米型の証明医療を実践されている
『リー湘南クリニック』李漢栄(医学博士)さんのブログ、
『院長ブログ・異端医師の独り言』より、転載させて貰います。科学が好きだと云うリーさんが、淡々と綴るこのブログは第一級の資料で、貴重な存在です。 貼り付け、開始。
2009年04月06日
☆★RCTの経験 医学部 2年生、香取・薬理学教授の講義で「世の中、薬と認可されているものでも、すべてに薬効があるわけだはない」。インチキ薬の例として ATPを挙げた。そんなものが、現在でも「脳循環・代謝改善薬」として、認可されている。ただし、癌末期の患者さんに、点滴すると元気になるそうだが(2 年くらい前の Lancet誌)、果たしてその意義は。
香取先生から無作為対照化試験( RCT)の重要性を学んだ。例えば、頭痛薬の RCTを行うと、決まってプラセボ群でも 30%くらいに有効で、何と、副作用もある確率で生じるという。
さて「カフェインが計算能力を高めるのか」を RCTで検証する実習に入った。あらかじめ、全員クレペリンテスト* を受け、そして、クラス員を無作為に 2群に分け、カフェイン入りコーヒーあるいはデ・カフェネイテッド・コーヒーを飲んだ。僕はコーヒー中毒だったので、カフェインなしとすぐに分ったが。 20分後、再びクレペリンテスト。集計してみるとカフェイン群の計算能力がデ・カフェネイッテッド群より 1割以上向上していた。(*一桁の数字が並び、端から一つ目と2つ目の2つの数字を足し合計の一桁部分を記す、次に端から2つ目と3つ目の数字を足し…、これを次々行う。合図と伴に次の行に移る)。
香取先生には、後に医学博士の審査をしていただいた。一般に、基礎医学系の先生は科学に純粋で高潔である。例外もあり、製薬会社の意に沿うデータを量産する薬理学教授もごまんといるが。
リー湘南クリニック (2008年1月の記事、校正)
2009年06月02日
★解剖学の寺田春水先生 東大出身の非常に厳格な教授で、先輩からその厳しさを聞いていた。解剖学の教科書は分厚く、それが上・中・下・3 巻、まるで図鑑である、かつてはそれを丸暗記したそうだ。
その不毛な経験から、寺田先生は、あまり重要でない解剖部位を思い切ってはしょった「解剖実習の手びき」を記された(藤田先生と共著)。とても優れた実習書で、ご献体を余すことなく解剖でき、この本の恩恵に浴した医学部生は多いのではないか。
また当時、解剖学はドイツ語かラテン語が常識だったのを、英語での解答を許した。外科系の医師になって、同僚達と異口同音に語ったのは、「もう一度、解剖学実習をうけたい」。
実習が終わると、メスやハサミを洗うのだが、洗剤の原液をスポンジにつけた学生を寺田先生が烈火の如く叱った。洗剤は薄めて使うそうである。以来、洗剤は約 10倍希釈液を使っている。
ある日、実習の休憩中にタバコを吸っていたら寺田先生から「リー君は暴走族みたいだね」と言われた。背筋が凍つき、進級はできないものと覚悟を決めた。回想すれば、冗談きついよ。
リー湘南クリニック (2008年5月の記事、校正)
貼り付け終わり。
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