これは、転移性大腸がんを対象とした無作為化第 Ⅲ相試験で見られた生存期間の延長を基に認可された;その臨床試験では、VEGF(血管内皮細胞成長因子)に対する
ヒト型モノクロナール抗体、
bevacizymab が標準化学療法と組み合わされた
[化学療法単独群に対して50%生存期間が2~3ヶ月延長した。]。 Bevacizumabは進行した非小細胞性肺がんに対して、標準治療と併用すると
[ 50% ]生存期間が延長した
[ が、治癒はなく、全滅までの時間は両群で同じ]。
もう2 つの抗血管新生薬、sorafenibと sunitinibも認可された;経口・小分子量の受容体タイロシンキナーゼ阻害剤(RTKIs)。これらは、VEGF受容体やPDGF(血小板由来成長因子)受容体を含め、複数の受容体タイロシンキナーゼを標的とする。Sorafenibは単剤で肝細胞がんに有効で、近年認可された。
これら薬剤による
[50%]生存期間の延長は、相対的に控えめ(数か月)だが、例外的に腎臓癌には有効な可能性がある。これら治療は高価で副作用がある。
これらの懸念は、抗血管新生治療効果の改善に関して次の疑問を提起した:このような薬剤はいかに作用するのか、そして bevacizmabはいかに化学療法の効果を増強するのか? 抗血管新生薬は腫瘍内の血管を正常化することにより化学療法の効果を増強する仮説を含め、いくつかの仮説が提唱されている。
腫瘍はいかに抗血管新生薬に耐性を獲得するのか? これらの薬剤の効果を予見できる臨床的に有用なマーカーはあるのか? 特定の薬剤の最適な量を決定する上で、有用な薬理学的バイオマーカーはあるのか? Sunitinibあるいは sorafenibといった抗血管新生的 RTKIsは、化学療法の効果を持続的に増強するのか? これら薬剤の副作用はいかに説明されるのか?
最近の発見は、これらの疑問に回答をもたらすだけではなく、新しい治療標的や治療選択をもたらす。この総説の目的は、特にこの 5年の発見を要約し、潜在的な臨床的重要性を指摘することである。
腫瘍血管新生におけるVEGFおよびVEGF受容体ファミリー 成長因子、VEGFファミリーおよび前血管新生効果を媒介する受容体タイロシンキナーゼに注目が集まっている(図1)。このファミリーで構造が類似しているのは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-Dそして PlGF(胎盤性成長因子)である。
腫瘍血管新生の主な媒介物は、VEGF-A(普通、VEGFと称される)である。VEGGF信号は血管新生に関わる血管内皮細胞、および循環血中の骨髄由来・内皮前駆細胞に高レベルで表現されているVEGFR-2 (VEGF受容体2)を介して伝達される。VEGF誘発血管新生に関してVEGFR-1の役割は謎に包まれている。VEGFR-1のVEGFへの親和性は VEGFR-2より約10倍高いが、その信号伝達特性は極めて弱い。
ほとんどのヒト癌細胞は、VEGFを表現している; VEGFが誘導されるには、非常に多くの、そして様々な遺伝的そして後生的経路がかかわるようである(図1)。固形癌に特徴的な低酸素状態は、VEGFを誘発する上で重要である。その効果は、低酸素‐誘発可転写要因1αと2αを介する。
一般的に、VEGF活性は、癌細胞による paracrine* 機序に帰する、つまり癌細胞はVEGFを生産するが、それに直接反応できない、なぜなら細胞表面にVEGF受容体を持たないからである。逆に、血管新生に関わる内皮細胞は無数のVEGF受容体を表現するが、VEGFを産生しないか極少量しか産生しない。
腫瘍血管新生を駆動するのに十分な量のVEGFは、血小板や筋肉など様々な宿主細胞に由来することは、今や明らかである;そのような細胞は腫瘍間質細胞も誘導する。これらの発見は、少なくとも部分的に、なぜ血中あるいは腫瘍中 VEGFが上昇している患者で、VEGF-VEGFR-2経路を標的とした薬剤が無効なのかを説明する。
血液系悪性腫瘍も含め、多くの種類の悪性腫瘍は VEGF受容体(特にVEGFR-1)を表現し、そして VEDFもまた産生することは、VEGFは時には腫瘍細胞に対して直接(細胞自律性)autocrine* 成長因子として作用することを示す。
さらに、ある場合 VEGF受容体は腫瘍細胞表面ばかりか、細胞内でも表現され ”intercrine” 機序で細胞生存を促すようだ;これは、乳癌細胞における VEGFR-1で示されている。血液幹細胞もまた細胞内 VEGFR-1および VEGFを表現し、ある段階では細胞の成長と生存を促す。
血管内皮細胞にだけ変異 VEGF遺伝子をもつマウスの実験結果は、非常に低レベルの autocrine-作動 VEGFは、細胞内 VEGFR-2を介する信号伝達系により、内皮細胞生存と血管恒常性を促すことを示唆する。そのようなマウスは重篤な心臓欠陥を持ち、消化管穿孔と血液凝固症をおこしやすい;これらの副作用は、
bevacizumab を投与された患者によくみられる。
これらの観察は、低分子量抗血管新生性 RTKIsやモノクロナール抗体の使用に関し、臨床的意味をもつ。RTKIsは細胞を貫通する能力により、筋肉抑制のような副作用をもたらす(それは、 c-kitや fmas-like tyrosine kinase 3といった他の受容体タイロシンキナーゼを標的とした薬剤によっても生ずる)が、細胞内 autocrine VEGF受容体を有する腫瘍に対しては、抗体より有効である可能性が高い。
ある条件下、neuropilinsが腫瘍血管新生に役割を果たしている。これらタイロシンキナーゼ活性を欠く膜貫通型受容体は、semaphorin 3Aと結合し、通常は軸索の誘導にかかわる。しかしながら、neuropillinsはまた VEGF-Aのsplice異型である VEGF165にも結合しする、だから血管新生を調整する; VEGFR-2に対して、共同受容体として作動する。だから、neropilinsは抗血管新生性・標的として注目を集めている。
他の進歩は、VEGFR-1に結合する PlGFに対するモノクロナール抗体の開発である。これら抗体はマウスでは副作用が少ない、なぜなら VEGFと違い、PlGFは正常細胞や組織にはほとんど、あるいは全く表現されていないからである。さらに、抗 PlGF抗体は腫瘍血管新生の VEGF経路を標的とした抗体と協調的に作用しえる。
循環血中 VEGFと可溶型 VEGFR-2は、抗血管新生療法の代理マーカーとして使われてきた。血中これら分子の測定は、抗体と低分子 RTKIsを含め、VEGFR-2を標的とした薬剤の最適な投与量を確立する前臨床的手段であった。そのような薬剤は、用量依存性にVEGFあるいは可溶性 VEGFR-2濃度を変化させ、マウスでは、それら濃度は抗腫瘍効果と相関する。循環血中 VEGFと VEGF拮抗物、例えば “VEGFわな”(aflibercept)と呼ばれる可溶性 “おとり”受容体と併せての測定は、血管新生の阻害を予想する有力な方法と期待されている。
他の受容体タイロシンキナーゼ信号伝達系は tie-2により媒介され、受容体タイロシンキナーゼは主として血管内皮細胞に表現されている。Tie-2に対する主な 2つのリガンド
[受容体に結合するもの] に ang-1(angiopoietin-1)とang-2がある。Ang-1はアゴニスト
[作動物:受容体と結合して作用を発揮するもの]として作用し、ang-2は拮抗物として作用するが、特に VEGFと協調的に血管新生を助長する。
これら angiopoietinsは VEGFと協調して新生毛細管を安定化し成熟させる。Tie-2経路の阻害は、VEGF経路阻害より困難であった、なぜなら同じ受容体に対する拮抗的そして作動的リガンドの複雑性、また tie-2あるいは angiopoietinsに対する特異的な薬剤発見の問題からである。しかしながら、ang-2に対する抗体およびペプチド様抗体(“peptibodies”)が最近開発された;動物実験で、これらは腫瘍血管新生と腫瘍増殖を阻害した。
この信号伝達系の研究は、血管と緊密な関係がある付属細胞、ぺリサイトの重要性にも光を当てた。内皮細胞ばかりではなく、ぺリサイトも ang-1を分泌する。さらに、ぺリサイトはPDGFを分泌し、それはPDGF受容体としたある種の低分子RTKIsの抗血管新生作用と関連する可能性がある。
*paracrine(あるホルモンの作用がその産生細胞の周辺にのみ限局して作用すること)
*autocrine(細胞がある因子やそれに対する受容体を産生することにより、さらにその産生を刺激すること)
NOTH-DELITALIKE 4信号伝達系 新しく発見された血管新生信号伝達系で最も注目を集めているのは、notch-deltalike lリガンド (Dll)4である(図2)。Notch細胞表面受容体(notch 1, 2, 3, 4)は、様々な細胞で表現され、細胞死、分化、そして分裂にかかわる。これら受容体は、近接した細胞の膜貫通型受容体(jagged1, jagged2, and Dll1, Dll3, and Dll4)と相互作用する。
血管内皮細胞は、notch 1と4受容体、そしてjagged1, Dll1, そしてDll4リガンドを表現する;これらのうち、Dll4は主に内皮細胞で表現されている。ノックアウト・マウス
[ 特定の遺伝子を破壊したマウス。この実験で遺伝子と表現型の研究は飛躍的に進歩した。]を用いた実験で、Dll4信号伝達系は胚において血管発達に必須のものであることが判明した―たった1つのDll対立遺伝子のノックアウトで胚は生存できない;VEGF遺伝子の単一不全も同様の効果をもたらした。
この知見は、notch-Dll4信号伝達系は、血管新生の主たる刺激物で、薬剤標的となりえる、なぜなら腫瘍血管内でDll4は、少なく部分的に VEGFにより上流調整されている。逆説的だが、中和抗体
[生物活性を不活化する抗体]を含め、Dll4を標的とした薬剤は腫瘍血管新生を増強する、しかし、ほとんどの新生血管は異常で機能的障害があり、血流を劇的に減少させる。
結果として、腫瘍の低酸素状態は正常の 7倍にも達し、だから腫瘍増殖を抑制する。明らかに、VEGFに誘発された血管新生は、新生血管・内皮細胞 Dll4を上流調節する、そして、そうすることにより、Dll4は慢性的機能的血管新生形成を阻害するため、負のフィードバック機序として作動する。
過剰な血管新生を阻害する他の機序に、VEGFなどの血管新生刺激物により誘発された、活性化された内皮細胞発現されるタンパク、vasohibibがある。だから、vasohibinはangiostatin、endostatin、thrombosponidin-1、そしてtumastatinといった特化された内因性血管新生阻害物質メンバーの一つである。
抗‐Dll4薬は、非常に注目を集めている。それら薬剤は、化学療法、放射線療法、あるいは他の抗血管新生療法と組み合わせる必要があるのかという問いは重要である、なぜなら、腫瘍内でそのような甚大な血管機能不全と低酸素状態を惹起する薬剤は、放射線療法あるいは化学療法の効果を減弱する可能性がある
[放射線や化学療法剤(マイトマイシンCを除く)の殺細胞効果は一部、活性化酸素に依存する。しかし、元々固形癌には効かないのだから、この危惧は机上の空論。]。
反対に、抗Dll4剤による分裂増殖する内皮細胞の増加は、化学療法そして多分放射線療法による血管標的効果を増強する可能性がある
[化学療法剤は、血管内皮細胞の分裂増殖にほとんど影響を与えない。僕の博士論文。]。
血管新生と循環血中・骨髄由来細胞 多くの種類の細胞が骨髄から動員され、血管新生の現場に到達し、血管新生を増強する(図3)。それらの細胞には、様々な造血細胞(CD45+)、それら多くは、VE-カドヘリン、VEGFR-1、VEGFR-2、tie-2といった内皮細胞マーカーを表現する単球あるいは骨髄性細胞である。
それらはまた、 CXCR4(CXCキモカイン受容体4)といったキモカイン受容体を表現し、それは、リンパ球と他の細胞種を誘引するSDF-1(CXCL12とも呼ばれる;間質細胞由来因子1)というキモカインに結合する。好中球と大食細胞もまた、前血管新生的性質をもつ。
さらに循環血中には、非造血系(CD45-)骨髄細胞集団、内皮前駆細胞がある。傍血管細胞(局所的VEGF分泌といったパラクリン機序で機能する)と対照的に、循環血中内皮前駆細胞は、成長している血管壁と融合し、内皮細胞に分化すると考えられている(図3)。
循環血中・内皮前駆細胞の研究は、注目を集め、また論争がある。そのような細胞を同定するための様々な細胞表面マーカー、そしてそれを検出する方法が、新生血管に取り込まれる細胞の割合にばらつきのある原因と思われる;その割合が多い方で 20~50%、低い方で5%あるいはそれ以下で、低い報告の方が多い。
これらの相違は、腫瘍血管新生における循環血中・内皮前駆細胞の普遍的役割について疑問を投げかけた、しかしすべての研究で、対象となったのは未治療の腫瘍だった。対照的に、前臨床研究では、VDAs(血管破壊剤)を投与直後に骨髄から前駆細胞の急性かつ大量の動員が示された。
これらの薬剤の多くは、微小管
[ 細胞骨格の成分。細胞分裂時、分裂した染色体をたぐりよせる。]阻害剤で、異常な腫瘍血管を即座に遮断しえる、だから腫瘍の広範な低酸素状態と壊死をもたらす。腫瘍辺縁には、常に生きた腫瘍組織が残る。VDE投与後、数時間以内に循環血中・内皮前駆細胞の数が増え、腫瘍辺縁に浸潤しコロニーを形成する、そうして腫瘍の迅速な再増殖に貢献する。
しかしながら、この過程は、抗VEGFR-2抗体により阻止される。それらVDA治療における役割に加え、循環血中・内皮前駆細胞は腫瘍増殖のごく初期段階に貢献する、しかし、血管におけるこれら細胞集団は内皮細胞に分化することにより、徐々に数が減る。さらに、比較的少数(約12%)の内皮前駆細胞の新生血管への編入は、腫瘍の顕微鏡的微小転移巣から肉眼的転移巣の進展といった機能的腫瘍増殖の主要な促進効果がある。
循環血中、骨髄由来細胞の血管新生へのかかわりは、臨床的意義をもつ。例えば、サイクロホファマイド
[ ナチスの毒ガス、チクロンの誘導体。悪性リンパ腫を治癒に導き、ネズミの腫瘍では著効を示すことから、化学療法時代を切り開いた薬剤。]を最大耐量
[ =LD50、薬剤を投与された動物、ヒトを含む、の10%が死ぬ量。]投与すると、内皮前駆細胞を動員し、それは腫瘍の再増殖にかかわると考えられている。
反対に、低毒性量の化学療法剤を、長期間休薬せずに、規則正しく投与すると(メトロノーム化学療法)、血中・内皮前駆細胞の動員を阻害し、内皮前駆細胞ばかりか、腫瘍新生血管内の分化した内皮細胞に拮抗的に作用する可能性がある。いくつか、メトロノーム化学療法の臨床試験が進行中である。
[メトロノーム化学療法、これからマスコミをにぎわす可能性がありますが、役に立たない代物と断言します。] 高用量あるいは高密度化学療法を受けている癌患者で、造血性成長因子の使用は考慮に値する、なぜならG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)は、内皮前駆細胞ばかりでなく、血管新生を助長するCD11b+顆粒球分化抗原(Gr1)+骨髄性サプレッサー細胞を動員しえる。
前臨床研究では、動員された前駆細胞の数は、メトロノーム化学療法の最適投与量を知る代理薬理動態マーカーとして有用で、また細胞死した循環血中・内皮細胞の一覧は、メトロノーム化学療法による抗血管新生作用を予見するのに使われた。しかしながら、これの方法は大規模な前向き臨床試験で検証されなくてはならない。最後に、図3に示されている細胞の多くが VEGFR-1および CXCR4を表現するので、骨髄由来細胞に媒介される血管新生を阻害するために、これら受容体を標的とする薬剤に期待する声がある。
抗血管新生薬への抵抗性 抗血管新生薬への内因的そして獲得的抵抗性は、臨床的に大きな問題となる。前臨床研究では、抵抗性に注目が集まり始めた。内因的抵抗性に関しては、マウス由来の抗-VEGF抗体抵抗性・継代腫瘍細胞をマウスに移植すると、骨髄由来細胞(CD11b+Gr1+骨髄性サプレッサー細胞)によりコロニーを形成することが示されている。
さらに、抗-VEGF抗体に感受性を示す細胞と抵抗性の細胞と混和し、マウスに移植すると、抗-VEGF抗体に抵抗性を示す。肺といった血管が豊富な臓器において、腫瘍が既存の血管を利用する場合、あるいはVEGF信号伝達系を標的とした薬剤を使用するとき、単に転移腫瘍細胞が VEGFあるいは VEGF受容体を欠如している結果、内因的抵抗性が生じる。
血管新生刺激物の過剰は、抗-VEGFR-2抗体に対する獲得抵抗の原因となりえる。例えば、抗-VEGFR-2抗体治療後、腫瘍内で血管新生刺激物質・bFGF(塩基性線維芽細胞増成因子)の上方調整である;この効果はおそらく、治療による低酸素状態により惹起される。
臨床的に bevacizumabを投与すると、血中PlGFが増加し、薬剤耐性の原因となりえる。ヒトでsunitinib投与は、高濃度の血中PlGFと VEGF(休薬中は元に戻る)を誘発する;これらの結果は、マウスでも再現されるが、腫瘍の存在の有無は効果に影響を与えない。
G-CSFとSDF-1は血中内皮前駆細胞そして、他の前血管新生性副細胞を動員し、またsunitinibを投与した健康マウスで上方調整される。さらに、二つあるいはそれ以上の誘発された成長因子が、bFGFとその同族PDGFで示されたように、相乗的に腫瘍血管新生を助長する可能性がある。そのような効果は、ある種の抗血管新生治療終了後、腫瘍血管の急激な再増殖に貢献するのかもしれない。
低酸素状態に抵抗性をもたらすTp53遺伝子が変異したマウス腫瘍細胞の選択と過増殖によっても、獲得抵抗性が発達する。これらの変異は、変異のない腫瘍細胞に比べ、新生血管により供給される酸素に依存しない。抗血管新生療法による腫瘍関連血管の急速な再構築も、抵抗性の原因である。成熟した再構築された血管は、未熟な血管を標的とした抗血管新生薬に抵抗性を示す。前述した機序は、獲得抵抗発達の遅延、あるいは可逆化する様々な戦略を示唆する。
血管新生と癌幹細胞 腫瘍内に「腫瘍を創出する」癌幹細胞の特徴をもつ細胞小集団が発見された
[癌細胞は一つの細胞から派生し、遺伝子を共有するので、癌幹細胞などともっともらしい名前をつけて機能面から分類するのはナンセンスと思う。]。
これら細胞は、腫瘍増殖を駆動し、そして治療抵抗性の種と考えられている。癌幹細胞仮説は、主として免疫不全マウス
[ヌードマウス] へ移植されたある種細の実験結果に基づいている。そのような推定上のヒト癌幹細胞をごく少数移植すると、高率に腫瘍「接取(takes)」がみられるが、癌幹細胞の特徴を持たない細胞を多数移植しても
「take」されない。
通常の化学療法および他の種類の薬剤は、後者を攻撃し、癌幹細胞は攻撃しないないと示唆されている。癌幹細胞の潜在的腫瘍原性特徴は、強力に前血管新生的で、それが抗血管新生薬の腫瘍‐阻止・効果を説明するかもしれない。
さらに、脳腫瘍における推定上の癌幹細胞は「血管に適した場所(vascular niche)」に近接し存在する。ネズミで、正所性
[脳内] に移植された神経璆腫に対する、抗VEGF抗体・治療は、vascular nicheを破壊し、癌幹細胞集団を標的とする。この細胞集団は高レベルのVEGFを表現し、だから抗‐VEGF治療に敏感だと期待される。低用量メトロノーム化学療法は、特に抗‐VEGFR2抗体といった抗血管新生性薬剤と併用すると癌幹細胞、あるいは癌幹細胞様細胞を標的とする可能性がある。
要約 [どの要約もそうだが、今後研究される分野や将来性が玉虫色に記されている。NIHから研究費を引き出すために、この分野は将来性があると主張する必要がある。将来はこの要約通りにならないのが常。] 癌治療における抗血管新生薬の普及は、何十年もの基礎的そして臨床的研究からもたらされた。しかしながら、その臨床効果は相対的に中程度である
[奏効率でなく、50%生存期間で効果を表せるようになったのは前進だが、延命期間は最長でも 3か月、年単位の効果、まして治癒はありえない。]。
腫瘍血管新生そして抗血管新生療法の反応を統治する分子的そして生物的機序をより深く理解することにより、効果の改善が見込まれる。多くの最近の進歩は、効果の改善を約束する。すなわち、VEGFとVEGF受容体ファミリーにおける新しい発見、腫瘍血管新生におけるnotch-Dll4信号伝達系の発見、骨髄由来細胞の前血管新生的役割の解明、抗血管新生薬に対する抵抗性機序の解明、そして癌幹細胞の生存と増殖における血管新生の役割を示唆する観察など。
これら発見は、抗血管新生療法の臨床的効果を改善する戦略を示唆する。それら戦略は、腫瘍血管新生と抗血管新生療法の生物学を研究する、より良い前臨床モデルの開発を含む。そのような改善は、早期癌の患者で長期抗血管新生治療を補助的に用いる上で重要である。転移病巣の治療に関し、抗新生血管療法の重要性と多様性は、単独療法よりはるかに有効であるべき抗血管新生薬の無数の組み合わせの可能性を示唆する。
貼り付け終わり。
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