要約 睡眠は、ハエからヒトまで保存されている欠くことのできない過程である。睡眠が厳密に恒常的にコントロールされていることは、その重要性を強調する。遺伝子スクリーニングから、われわれは
Drosophilaの睡眠に必要な遺伝子、
sleeplessを発見した。
sleepless遺伝子は、脳に豊富なglycosylphosphatidylinositol-anchored タンパク質をエンコードする。SLEEPLESSタンパク質の喪失は、睡眠量の劇的な減少をきたす;SLEEPLESSの中程度の減少は基礎的睡眠量にほとんど影響を与えなかったが、睡眠剥奪後のリバウンド睡眠量を著明に減少させた。
遺伝的そして分子的分析は、Shaker-依存性 Kイオン・チャンネルを阻害する変異、
quiverは
sleeplessの対立遺伝子座であることを明らかにした。この発見に一致し、
sleeplessが変異すると Shakerタンパク質レベルは低下する。われわれは、SLEEPLESSは膜興奮性を鎮めることにより睡眠を駆動する信号伝達分子であると提唱する。
不十分な睡眠は、工業圏で問題になっている。慢性的睡眠不足は、生活の質(QOL)や生産性を低下させ、そして致命的事故につながる。睡眠によりもたらせる生物学的意義は不明だが、睡眠は重要のようである、なぜなら睡眠はハエからヒトにまで保存され、長期の睡眠剥奪は死を招く。睡眠をコントロールする機序を突きとめることは、睡眠の質改善に画期的手段を切り開くに違いない。
睡眠は 2つのプロセスにより統制されている:24時間周期と恒常性。周期時計は入眠のタイミングを統制し、恒常的機序は睡眠の必要性を統制する。入眠するための恒常的圧力は、覚醒時間が長くなると増し、睡眠時間が長くなると減る。恒常的コントロールは、正常(基礎的)そして睡眠剥奪後の回復(リバウンド)睡眠に影響を与えると考えられている。しかし、睡眠の恒常的統制の分子機序は、十分に解明されていない。
生物学的機序を明らかにする有力な手法は、睡眠過程に必要な分子をバイアスの入らない遺伝子スクリーニング法を導入することだ。
Drosophilaの睡眠モデルは、日周期時計の分子的基礎の解明に非常に重要であることが証明され、この目的に適している。いくつかの
Drosophiaの遺伝子が睡眠統制に関わることが示されているが、それらのうち一つだけ、Shaker‐Kイオン・チャンネルをエンコードしている遺伝子だけが遺伝子スクリーニングにより単離された。
この遺伝子の変異は、最も短い睡眠時間・表現型をきたし、スクリーニング法の有用性を証明し、膜の興奮性が睡眠に決定的に必要であることを示唆する。
われわれは、大規模なバイアスの入らない遺伝子スクリーニングで、ハエで正常基礎的睡眠そして睡眠剥奪後のリバウンド睡眠に必要な
sleeplessを突きとめた。われわれは
sleeplessは、脳に豊富な glycosyl-phosphatidylinositol (GPI)-anchored*膜タンパクをエンコードしていることを発見した
[ *anchored:錨を下したという意味、細胞膜にお尻を埋めた、あるいは膜を貫通していること]。
われわれはまた、Shaker・依存性Kイオン流を不全にする
quiver変異は、
sleeplessの対立遺伝子座で、
sleepless変異ハエでは Shakerタンパク・レベルは低下していることを示す。われわれは、SLEEPLESSタンパクは、Kイオン・チャンネル活性を増強し、それによりニューロン興奮性を抑制することにより駆動される恒常的睡眠へ信号伝達する、と提唱する。
sleeplessの究明 睡眠調節に関わる遺伝子を付きとめるため、睡眠時間が短い変異・ハエの遺伝子スクリーニングを行った。3,500系列におよぶ
トランスポゾン挿入をもつ変異ハエをスクリーニングした。
これら系列の睡眠・ヒストグラムを図1に示す。われわれは、一日睡眠量が最も短い変異系列を研究に選び、それを
sleeplessと命名した。遺伝的背景を均質にするため、この系列を等生長の野生系列、行動研究に特化して作成された系列
iso31と5回、異種交配させた。
オスおよびメスの
sleepless異型の日中および夜間の睡眠時間は、非常に短かった(図2B)。
sleepless変異ハエの 9%は全く寝なかった―コントロール・ハエでは、表現形
[寝ないこと]は全くみられなかった。われわれの知る限り、sleepless変異ハエは、単一の遺伝子変異に帰する最も短い睡眠時間を示す(80~85%睡眠時間が短い:図1C)。
極端に短い睡眠時間に関わらず、覚醒時行動(覚醒時、分あたりの行動回数)は増えず(図1D)、これはこの変異は、覚醒時に極度に活動的でないことを示唆する。
睡眠量の極端な減少は、主に各睡眠時間の短縮にある(図1E)。しかし、睡眠量減少の一部は、睡眠回数の減少に帰する(図1F)。変異ハエで、これら表現形は劣性である、なぜなら、変異
sleeplessのコピー 1本をもつハエは、コントロールと同じように行動した(図1、C~F)。
SLEEPLESSは脳に豊富な、GPI-anchored・タンパク sleepless変異ハエはDrosophilaゲノム・プロジェクトで CG3472と命名された遺伝子のオープン・可読・フレームにP-要素挿入(EY04063、われわれは P1とよぶ)をもつ。
この遺伝子の構造は、2つの非コード・エクソンと 5つのコード・エクソンをもち、後ろの 2つは、やはり 3.9kb と予想される 3'非転写領域(3’UTR)をもつ(図2A)。
オリジナルの P1挿入系列に加え、われわれが P2と呼ぶ、第二の系列があり、3’TURにトランスポゾン挿入(f01257)をもつ。
SLEEPLESSタンパクは、信号伝達タンパク、N型糖付加部位、そして GPI接合部位を含むと予想される(図2、BとC)。SLEEPLESSは、他の昆虫ではよく保存され、 Caenorhabditis elegans と相同性を有すが(線虫でF31F6.8、アミノ酸 51~133で 46%類似)、脊椎動物と相同性はみられない。しかしながら、保存された下流経路で、機能的脊椎動物相同性がある可能性がある。
SLEEPLESSタンパクを特徴づけるため、ペプタイド抗原を抗体作成に利用した。この抗体は、ウェスタン・ブロット*上で、
sleeplessP1変異の抽出物では検出されない、野生種抽出物の 2つのバンドを認識し、このことは、
sleeplessP1は重篤な
hypomorphoあるいは、無効対立遺伝子座であることを示唆する
[ *Western blots;検索した 2ページ以内には適当な解説がない:試料を電気泳動で、質量と荷電状況で区分けし、目的とするタンパク質やペプタイド(=短いタンパク質)をその抗体で識別する方法]。
SLEEPLESSは、N型糖付加部位を含有するので、頭部抽出物のタンパク質を糖分解し、ウェスタン・ブロットで SLEEPLESSの可動性を調べた。この条件下、低分子タンパク質のバンドだけが認識され(図2D)、SLEEPLESSは in vivoで糖化されていることを示す。
sleeplessは潜在的 GPI接合部位をもつので、次に SLEEPLESSの局在を調べた。DrosophiaS2R+ 細胞に野生型
sleeplessを移入し、非浸透性条件下で 抗SLEEPLESS抗体で染色すると、細胞表面に SLEEPLESSタンパクが表現されていた(図2E)。細胞をphosphatidylinositol-特異性 phospholipase C(PI-PLC)で処理すると、膜表面での表現は著しく減弱し(図2F)、培養液に SLEEPLESSの遊離がみられた(図2G)。これらの結果、 SLEEPLESSタンパクは形質膜の細胞外表面において GPIアンカーにより接合し、PLC切断により遊離しえることを示す。
われわれの作成した SLEEPLESS抗体を用い、SLEEPLESSタンパクはハエの体部にくらべ脳と頭部に豊富なことが明らかになった(図S2H)。これらの発見と一致し、sleepless mRNA表現は、脳は体部より 23~42倍高い(成熟
Drosophila遺伝子アトラス)。SLEEPLESSタンパク・レベルは周期性を示さず、睡眠剥奪の影響を受けなかった(図,S1, AとB)。
sleeplesの遺伝学的分析 睡眠表現形で
sleepless遺伝子の位置を特定できるか調べるために、sleeplessP1とそれを欠損した 2種を交配した。予想されたように、2種とも
sleplessP1の短時間睡眠という表現形を補完しなかった(図、S2, AとB)。
sleeplessP1変異の睡眠表現形が
sleepless遺伝子不全によるのかを確認するため、P-要因を正確系そして不正確系を作成するように導入した。P-要因の正確な削除は、野生種に比べ
sleepless変異種の睡眠量を回復させた(図3AとS2C)。
また、
sleeplessコード領域の一部を除去した不正確な遺伝座(?40)を得、それは無機能対立遺伝子座のようだった(図S2D)。この解釈に一致し、sleepless?40変異は検出しえる SLEEPLESSタンパクを産生しなかった(図3B)。
この変異種の睡眠量は、P1変異と同じくらい少なかった;表現形は sleepless遺伝子を特定する、なぜなら?40対立遺伝子座は P1対立遺伝子座を補完しなかった(図3CとS2C)。
次にトランス遺伝子からの野生型SLEEPLESSの表現形が
sleeplessP1変異種が回復しえるか検討した。トランス遺伝子をもつ
sleeplessP1変異種において、睡眠量は完全に回復した(図3とS2E)。欠如そして削除実験をあわせると、レスキュー・データは
sleeplessP1変異種において
sleepless遺伝子中断が睡眠量の極端な低下の原因である明らかな証拠となる。
前述したように、
sleeplessP2変異は
sleepless(sss)遺伝子の 3'UTRに独立した
トランスポゾン挿入をもつ。同型(ホモ)接合
sleeplessP2変異メスの睡眠量はコントロールとほぼ同じで、オスは若干少ない(図3DとS2F)。
反対に、
sssP2/
sssP1 トランス‐異型接合異種は、
sssP1/コントロール・ハエにくらべ、睡眠量が 30%ほど少ない。これらの結果は、P2挿入はもともとの P1挿入より弱い対立遺伝子座であることを示唆する。
この可能性の生物学的基礎をを検証するため、異型とコントロール・ハエ頭部をウェスタン分析にかけた。上に示したように、P1挿入は睡眠量を著しく減少させ、SLEEPLESSを検出されないレベルまで低下させた(図 2Dと3B)。
反対に、睡眠量にほとんど影響を与えない P2挿入は、SLEEPLESSタンパクを中程度減少させた(図 3E)。最後に、睡眠量が 30%減少するトランス-異型接合
sssP1/
sssP2・ハエでは、SLEEPLESSタンパクは大幅に減少するものの検出された。これらデータは、睡眠量は SLEEPLESSタンパク・レベルと相関し、SLEEPLESSの大幅な減少は睡眠量を変化させることを示唆する。
sleepless変異種における恒常的反応の低下 次に、
sleepless(sss)変異ハエは睡眠剥奪に対し、恒常的反応を欠くかを検討した。
sleeplessP1ハエでリバウンド睡眠は観察されなかったが、剥奪後あまり寝なかった。
だから、中程度睡眠をとる
sssP1/
sssP2 トランス-異型接合・ハエ、そして、ほぼ正常量の睡眠をとる
sleeplessP2 同型接合・ハエを検討した。
機械的刺激は、
sleeplessP1そしてコントロール・ハエで同じ量の睡眠を剥奪した;
sssP1/
sssP2ハエは、コントロールにくらべ中程度睡眠量が減少した(図4CとS3C)。コントロール・ハエは、睡眠剥奪後リバウンド睡眠をとったが、
sssP1/
sssP2ハエのリバウンド睡眠量は少ない、あるいはゼロだった。
予想外に、
sleeplessP2同型接合・ハエでもリバウンド睡眠の欠落が観察された。さらに、睡眠剥奪後ライトをつけたとき、コントロール・ハエはすぐに眠りについたが、
sleeplessP1と
sssP1/
sssP2異型では、この効果はあまり見られなかったか、欠落していた(図4CとS3C)。
他の遺伝子も睡眠の恒常的調整に役割を果たしていると示唆されているが、これら遺伝子に変異をもつハエのリバウンド睡眠の評価は、基礎睡眠(それは異なる量の睡眠を減らす)の減少により、しばしば混同されている。
一般的にリバウンド睡眠量は、睡眠剥奪により増加する。だから、基礎的睡眠量が異なる動物で睡眠剥奪の影響を比較するとき、リバウンド睡眠を絶対量あるいは睡眠剥奪量と比較すべきか曖昧である。
われわれは、この問題を回避するため、 SLEEPLESSの睡眠恒常性への貢献を検討するのに sleeplessP2変異を用いた。
sleeplessP2変異ハエは、リバウンド睡眠が極度に低下したが、基礎睡眠はほとんど変化しなかったという発見は、これら変異ハエでは睡眠恒常性に障害があることを示す。
sleeplessが他の行動と寿命に及ぼす影響 sleepless(sss)変異種をより詳しく特徴づけるため、いくつか他の行動的表現形を検討した。ある種の中央時計遺伝子の変異は、基礎睡眠とリバウンド睡眠表現形をきたすので、
sleepless変異種の日周期リズム表現形を分析した。
sleeplessP1変異種は弱いリズムを呈したが、すべての
sssP1/
sssP2トランス異型接合変異種(日中睡眠量は 30%ほど少ない)は、リズムを保った(図5、AとB、表S1)。さらに、
sleeplessP1変異種における背側ニューロン(時計細胞)PERIODタンパク・レベルの変動は損なわれず(図5C)、これは睡眠リズムの低下は、中央時計の欠陥によるのではないことを示唆する。
他のいくつかの行動は正常だった。
sleeplessP1変異種の光走性反応は、コントロールと類似し(図S4A)、味覚分別アッセイでもコントロールと類似した(図S4B)。
sleeplessP1変異ハエは、バン(bang)-感受性麻痺表現形
[ハエの入っている瓶を急に叩いて驚かし、ハエが麻痺するか]を呈さなかったが、ポジティブ・コントロールに用いた easily shockedハエの 89%がこの表現形を呈した
[麻痺した]。
一方、
sleeplessP1ハエはどこか非協調的で、変異種の数匹はコントロールより早い時間でよじ登れた(図S4C)。しかしながら、非協調性にもかかわらず、
sleeplessP1ハエはコントロールより長く歩き、飛翔できメーティングできた。睡眠は、本質的生物機能を保存するという広く受け入れられている見解に一致し、
sleeplessP1変異ハエの寿命はみじかかった
[ 50%生存期間;変異ハエ 約 30日、コントロール 約 70日]。
sleeplessは、quiverの対立遺伝子座で Shaker表現に影響を与える 2種の短時間睡眠変種、Shakerと Hyperkineticは、エーテル‐誘発・足震動を呈すので、
sleepless変異ハエでこの表現形をアッセイした。
sleeplessP1と
sleeplessP2両方が、足震動を呈した。特に、
quiver変異種(分子的欠陥は不明)も足震動表現形を呈し、この表現形は
sleepless近くに特定されている。quiver変異種は Shaker-依存性Kイオン流・機能不全があるので、
sleeplessの対立遺伝子座としての
quiver特定は、Shakerが SLEEPLESS機能の効果器を意味すると考えられる。
遺伝的そして分子的分析は、
quiverはまさに
sleeplessの対立遺伝子座であることを突きとめた。
quiver変異は、足震動表現形に対し
sleeplessP1を補完しなかった。同様に、5回交配させた
quiver変異種は、野生種より睡眠量が有意に減少し、そして
sleeplessP1/
quiver トランス‐異型接合では、さらに睡眠量が減少した(図6AとS6)。
次に
quiver変異の分子的基礎を検討した。
quiver変異における
sleepless転写物の逆転写 PCR(RT-PCR*)は、3つのバンドを示したが [Western blot法で]、野生型
sleepless転写物は一本のバンドのみを示し(図6B)、quiver変異にスプライシング [遺伝子をつなぎ合わせること]欠陥があることを示す
[*逆転写:DNA→mRNA→tRNAがアミノ酸を運んでくるという流れの逆、mRNAから逆転写酵素で DNAをこさえ、DNAをPCR法で増やすこと]。
3本の
quiverバンドのどれもが電気泳動上、野生型のバンドと一致しなかった。RT‐PCR産物の配列決定は、
quiver変異遺伝子中 sleeplessの最後のイントロン(イントロン6)の変化したスプライシングを明らかにした(図6C)。イントロン中に発見された、単一塩基変化がスプライシング欠陥に関与しているようだ(図6D)。
3つの
quiver転写物のうち一つだけが枠内にあると予想され(結果として、21アミノ酸挿入)、だから機能的 SLEEPLESSタンパクを産生する潜在力をもつ。
quiver変異種のウェスタン分析は、野生型 SLEEPLESSタンパクよりわずかに大きな分子量の少量の SLEEPLESSタンパクを明らかにし、それは枠内
quiver 2転写産物と関係があると思われる(図6E)。
quiver変異では、Shaker-依存性Kイオン流が著しく低下しているので、
sleepless変異種で Shakerタンパク・レベルが影響を受けているか検討した。われわれは、
sleeplessP1変異種では Shakerタンパクの一つの型の表現が低下している(図6F)ことを発見し、それは、SLEEPLESSは少なくとも部分的にタンパク表現を介して、 Shakerに影響を与えることを示唆する。これらの結果は、SLEEPLESSは Shaker Kイオン・チャンネルの重要な調整器であることを明示する。
考察 われわれは、正常状態そして睡眠剥奪後、睡眠の恒常的統制に必要な Drosophila遺伝子を突きとめた。睡眠-覚醒・安定性と基礎的睡眠量を統制する遺伝子は確認されてきたが、リバウンド睡眠に重要であると報告されたものは少ない。だから、SLEEPLESS機能の詳細な分析は、睡眠の恒常的統制に機械論的洞察を加えるに違いない。
sleeplessP2ハエは、SLEEPLESSタンパクの中程度低下と基礎睡眠のわずかな減少を示したが、リバウンド睡眠は劇的に減少したことは、何の意味もない。正常対リバウンド睡眠におけるSLEEPLESSタンパクに対する差異の必要条件は、睡眠統制の 2つの過程モデル、すなわち、睡眠は日周期的覚醒駆動と恒常的睡眠駆動の相反する影響力によりコントロールされているという文脈において説明できるのかもしれない。
この文脈では、早朝にリバウンド睡眠がおこるには、ハエを覚醒し続ける強力な日周期インプットに拮抗する、睡眠をもたらす強力な恒常的信号が必要と考えられる。夜間、日周期的覚醒駆動は減弱するか欠如している時、恒常的インプットの弱いレベルがハエを睡眠につかせるのに十分であるかもしれない。
sleeplessP2変異種での中程度のSLEEPLESSレベルは、覚醒を促進する日周期信号が弱い時(夜間)睡眠可能な範囲にあるが、信号が強い時(早朝)睡眠できない。反対に、SLEEPLESS表現が検出できないレベルの
sleeplessP1と
sleepless⊿40変異種では、基礎睡眠とリバウンド睡眠両方の劇的減少を示す。これら変異種では、日周期覚醒駆動が弱い夜間でも、睡眠促進信号はハエを睡眠につかせるには弱すぎると思われる。
SLEEPLESSの細胞レベルでの役割を解く糸口は、われわれのこの分子の生化学的特徴づけによりもたらされる。SLEEPLESSタンパクは脳に豊富なGPI-anchored膜タンパクである。
GPI-anchoredタンパクは、リガンドとして、あるいは、共受容体そして GPI切断後、拡散的信号として作用しえる。われわれは、SLEPESSタンパクの総レベルの日周期あるいは恒常的統制を検出することはできなかったが、 GPIアンカー切断のレベルでそのような統制が起こりえると考える。
遊離の統制は、すべてのレベルで周期性を示さない、色素-分散要因(時計ニューロンの出力)といった他のタンパクにより時間的にコントロールされていることが知られている。あるいは、SLEEPLESSはそれを表現する細胞により統制されているが、われわれのウェスタン・ブロットでは検出されなかったのかもしれない。
SLEEPLESSが睡眠を統制する機序は、われわれの発見で示唆されるように
quiverは
sleeplessの対立遺伝子座で、sleepless変異種では SLEEPLESSタンパク・レベルは減少していることで説明される。さらに、
quiver変異種では幼虫神経筋接合部で Shaker-依存性Kイオン流が著しく阻害されている。
だから、われわれは、SLEEPLESSは Kイオン・チャンネル表現と活性を調整することにより膜興奮性を低下させると提唱する。Drosophilaでスクリーニングした何千もの変異種で、最も顕著な睡眠表現形を示した 2種が Shaker-Kイオン・チャンネルとその推定上の調整器、
sleeplessに影響を与えることこそが印象的である。だから、膜興奮性の低下が睡眠の本質に違いない。まとめると、われわれのデータは、SLEEPLESSは神経興奮性を駆動する恒常的睡眠とリンクした信号伝達分子であることを示唆する。
リー湘南クリニック (2008年10月)
貼り付け終わり。
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