平均寿命が長いことは、乳児が死ににくいこと、すなわちハンディを持つ児が生まれにくいことを意味する。堕胎が禁止されている国では、重い遺伝病をもつ児にも生が与えられ、早くに世を去る。
当然ながら「周産期死亡率」は高くなり、平均寿命は短くなる。ただし、中世以降、工業圏で平均寿命が大きく延びたのは、衛生概念の発達と上下水道の完備によるのです。
平均寿命の定義は「公衆衛生学」で学んだし、国家試験にも出題されたのに「日本は世界一の長寿国、だから医療レベルが高い」にすりかえられる。ちなみに、命をとる癌が撲滅されると平均寿命は(確か)2年弱のびます。
同じ文脈で多い作り話は「不況で自殺者が増えた」とか「癌死者の激増」などです。自殺は中高年に多く、この年齢層の自殺者「率」は、戦前、戦中、そして戦後一定です。
図説国民衛生の動向をみたら、不況時に自殺者率はむしろ低下している。中高年の人口割合が増えているのだから、自殺者数は当然増える。不況時、これが政争の具にされた。
老衰で亡くなられた方を調べれば、100%何らかの癌が見つかる。生前にそれが見つかれば、臓器をごっそり取られ、死ぬまで癌と闘わされ、癌死と診断される。高齢者人口が増えていけば、当然ながら癌死者数も増加するのです。
「日本は世界一の長寿国」、そして「癌死の激増」は、厚労省が検診を正当化するのに使い勝手の良い常套句なのです。
リー湘南クリニック (2007年1月の記事、校正)
貼り付け終わり。
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