第一級資料の宝庫、
リー湘南クリニック院長ブログ『異端医師の独り言』さんより転載貼り付けます。貼り付け開始。
2010年07月12日
☆☆★ 血管新生阻害薬 残念ながら効果ありません 固形癌が増殖を続けるには、宿主からの酸素と栄養の供給が必要で、それは宿主から血管(リンパ管)を新生させることにより達成される。
1970年代、J. Folkmanは「血管新生を阻害すれば固形癌の増殖を選択的に阻止できる」という仮説を提唱した。1990年代後半から、癌組織が血管(とリンパ管)を誘発する仕組みが詳細に理解されるようになり、様々な血管新生阻害薬が開発された。僕は、J.Folkmanはノーベル賞を受賞すると確信していた。
2004年 2月、アメリカで「ビーバキズマブ(Bevacizumab)」という初の血管新生阻害薬が認可された。これは、癌細胞が分泌する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対する
ヒト型モノクロナール抗体で、実験的には強力な血管新生阻害作用が示された。転移のある大腸癌患者を対象にした無作為化試験で、標準化学療法にビーバキズマブを併用した群では、化学療法単独群より 50%生存期間が 5ヶ月長くなることが示された。
私もかつて血管新生の研究に携わったので、癌治療「新時代」の幕開けかと興奮をおぼえたものだった。ところが、他施設での追試をみると大した効果はなく、また高血圧や心毒性など重篤な副作用のため、総生存(OS)は改善されない。認可から 2年、製薬会社(Genentech)は巨費を投じ、本剤を宣伝しているが、残念ながら役に立たない。
蛇足ながら、軟骨には血管が生えないので、かつて血管新生阻害物質が含まれている可能性が指摘されたことがある。これが発端で、
インチキ高額療法
「深海サメ軟骨」が登場したわけです。
下に関連記事
☆★ワトソン・著「DNA」にある J.Folkman DNAの二重らせん構造の発見によりノーベル賞を受賞された、ワトソン・著「DNA」の 170ページにJ. Folkmanが紹介されているので、【記事をそのまま】紹介します。一部、誤解されやすい記述があるので
≪注釈≫を加えました。
【がん細胞も通常の細胞と同じく、成長するためには栄養が必要である。がん細胞はその栄養を、近くに生じる血管から得ている
≪がん細胞の数が 100万個、直径1mm位になると、癌細胞は血管とリンパ管新生因子を分泌し、宿主から血管とリンパ管を誘導する≫。もし腫瘍内部
≪周辺≫に血管ができないようにすれば、その血管から栄養を得ようとするがん細胞を餓死させられはずだ。
ジューダ・フォークマンが、1960年代初め、ワシントンDC郊外の海軍医療研究所にいたとき、「小さい腫瘍が危険になるのは、新しくできた血管が腫瘍内部に行き渡ってからだ(このプロセスを“血管新生”という)」というアイデア
≪がん組織は絶え間なく血管を新生し、正常組織は血管を新生しないというアイデア≫を思いついた。
ユダヤ教指導者の息子としてオハイオ州に生まれたフォークマンは早くから才能を見せ、オハイオ州立大学の卒業生として初めてハーバード大学医学部に進学した。高校生のときにはイヌの手術を手伝うようになっており、大学では、一時的に血液の供給を停止された肝臓を冷却する装置を発明した。そして 34歳にして、ハーバード大学史上最年少で
≪小児≫外科の教授となる。】
リー湘南クリニック (2006年12月の記事、校正)
leeshounann at 11:49|
Permalink│
僕が最も尊敬する2人の科学者 |
医学、科学論文の要約
貼り付け終わり。
- 関連記事
-
« ★ピロリ菌 自己除菌法 l ホーム l ★命を託している医療・薬剤の実体が知りたい その116 ☆☆☆★ ピロリ菌を除菌しましょう »