ダーウィンは、The Descent of Manに、これは人類において正しいように思えると記した。もし、2種の部族が競争したとき、「一方の種族は、勇気のある、同情的そして忠実なメンバーを多く含めば、お互いにいつも危険を注意し合い、お互いに守り合い、この種族は成功しやすく、他の種族を制圧する、」と記した。
経済学者の Bowlesは、それは近代でも、闘争している集団にも当てはまるという。「軍の歴史から、より協調的な集団の方が、成功をおさめやすい、」。過去において、度重なる紛争は、本質的に集団に協調をもたらすと Bowlesらは論じる。
彼らの最近の研究は、その論点を支持する。2009年 6月号のサイエンス誌で、Bowlesは、ある(その生活様式は古代の人間社会に最も近似した)狩猟集団について、約 5万年前からの考古学的証拠、および民族史的そして歴史的報告を評価した。
Bowlesは、争い(戦争)による成人の死亡率は 0~46%、平均 14%、先の 2つの大戦での欧州での死亡率をはるかに凌駕することを発見した。そのように頻繁におこる争いは、生存に必須な利他的協調を育んだと言う。
ゲーム理論を用い、彼は戦争中何が起こるのかシミュレーションし、人類は容易に、彼のいう偏狭的利他主義(parochial altruism)、つまり、血族関係を離れ他の集団の人を助け、よそ者を傷つける、に進化すると結論した。「関係者(actor)に憂慮すべきコストがかかる場合でも、集団内で協調する傾向を助長してきた、」と語る。
人類から微生物へ(From man to microbe)
いかに人類が協調を獲得してきたのかを理解するために、非常に多くの研究から多くの説が提唱されてきた。驚くことに(But)、協調するのに大きな脳も魅力的な笑みも必要としない。細菌性(バクテリオ)ファージ
≪細菌に寄生するウイルス≫と呼ばれるウイルスでさえ協調することにより繁栄してきた。
2005 年、テキサス大学の Sachsと Bullは、自己-関心の競い合いを減少させる特性は、2つの異なるファージに進化することを示した。2つのファージを同時に細菌に注入した。代を重ねるうち、2つのファージは、それぞれのゲノムを一つタンパク膜内にパッケージし、次の細菌宿主への伝染を確実なものにした。片方のファージは、自己を複製する遺伝子を結局失うと報告した。
さらに多くの研究者たちは、さらに多くの微生物たちでの協調を発見した。「人類や他の動物での協調を理解するために用いられるコアー説は、微生物にも当てはまる、」とハーバード大学の Fosterは言う。
いくつかの研究チームは、イースト
≪カビ=真菌の一種≫、細菌、そしてアメーバーの協調の進化について基本的原理を理解してきた。
「微生物は、実験的に扱いやすい、…そして実験室の時間スケール内で、ダイナミックに進化する、」とMIT(マサチューセッツ工科大学)の Goreは言う。関係、裏切り、そして他の要因が微生物たちの協調的冒険の成功を決定する。
例えば、Edinburgh大学の生物学者・Westは、日和見感染菌
≪宿主の抵抗力が低下したときや、強力な抗生物質で宿主の常在菌=味方の菌を駆逐すると、感染する菌≫Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)で、定足数感知(quorum sensing)と呼ばれる集団現象を研究する。
他の細菌と同じように、緑膿菌もやがて仲間の菌が毒力因子、栄養素‐収集分子、そしてバイオフィルムと呼ばれる細菌の塊を形成する足場になる混合物を含む、化学信号を分泌する。Westらは、個々の緑膿菌が近傍に他の仲間が増えると、ある種の生化学物質濃度が高くなり、緑膿菌集団の利益となる物質を分泌することを示した。
二年前、Westのチームはまた、人類の進化ゲームと同様、この緑膿菌でのシステムは裏切りに対してもろいが、助けになる物質を分泌しない緑膿菌は、集団に対して成果をもたらすことを示した。
一つの実験で 48時間= 7代後に詐欺集団は、1から 45%に増え、協調的な野生株がいかに存続し得るのか問題を提起した。Westは、その関係が解答だと考える: 野生株は高密度の集団を形成する傾向があり、変異した(異なる遺伝子をもつ)詐欺集団を追い出す。
2月号の Current Biology(最近の生物学誌)に、Westらはマウスの熱傷に緑膿菌が感染し繁殖するとき、協調と裏切りの研究により上記の発見を補強した。
裏切り集団の割合は、細菌そしてマウスの健康に影響を与えた。より多くの裏切り集団が現れたとき、マウスは良くなった ― 恐らく、毒力要因があまり産生されなかったことによる ― 裏切り者を中央に据えることにより、定足数感知細菌の感染を治療したに違いないことを示唆する、と Westは言う。
おそらく、最も称賛される社会的微生物は、Dictyostelium(ねばねばしたカビ)である、長年、発達そして細胞生物学者に研究されてきた。一世紀以上前、研究者たちは、この単細胞アメーバーは時に茎のある胞子を形成するために合体し、胞子をより栄養豊富な環境に放出することを発見した。
1980年代、研究者たちは茎を形成するアメーバーは利他的で、自らの自己複製をあきらめ、他のアメーバーが胞子を形成するのに協力することに気づいた。 Rice大学の Quellerと Strassmanは、他の微生物と同様にアメーバーにみられる協調は、
トレードオフ(tradeoffs)と同族関係が関与することを明らかにした。
裏切りは常に脅威である: 2000年、コロンビア大学の Kessinは、細胞をスクリーニングし、裏切り細胞は、非・自己再生的茎になるのを避け、胞子を形成する細胞に侵入する変異種であることを見出した。
もし裏切りアメーバーが集団の半分を占めると、約 2/3が実を結ぶアメーバーで胞子を占めることができる。ベイラー医科大学と Riceらの研究で、100以上の騙す能力のある裏切りタイプの遺伝子を発見した。これら遺伝子は、全ての機能をカバーし、実を結ぶ茎の発達において異なるポイントに関与する。
「多くの遺伝子と代謝経路が関与することは、容易に裏切り遺伝子に進化し、その完全なコントロールを難しくする、」と著者らは、 2008年 2月号の Nature誌に報告した。
しかし彼らの研究は、アメーバーは大きな集団内で裏切りを抑止する、なぜなら裏切りを可能とする遺伝子はまた裏切り者を集合体形成させる傾向があることを示した。研究室内では、casAと呼ばれる細胞接着遺伝子を欠くアメーバーは、茎をバイパスし実を結ぶ胞子になりすまし定着する、つまり裏切り者の様にふるまう。しかし、自然界では、細胞接着タンパクがないアメーバーは、実を結ぶ胞子に参加できない、と Quellerは言う。
CasA遺伝子は、いわゆる緑-のき(green-beard:植物)遺伝子の例で、自己の認識を可能とする ― まるで、緑-のきを認識するように ― そして、同じ遺伝子をもつ他のものと協調する。緑-のき遺伝子は、個体間の関係の親密さに関わらず、他者の遺伝子のコピーが永続されるように助け合う。
アメーバーのケースでは、casaAタンパク
≪CasaA遺伝子をもとに作られたアミノ酸の長い並び=タンパク質≫は、お互いに接着し、この緑-のきを共有できるように細胞同士を接合させ、茎を形成し実のなる集合体を形成する。
数は少ないが、実社会で、緑-のき遺伝子が知られている。イースト菌はその一つだが、2008年 ハーバード大学の Fosterと Leuvenカソリック大学の Verstrepenらが示したように、FLO1と呼ばれる他の細胞接着タンパクはイースト菌の塊を形成させる。アメーバーでみられたように、その遺伝子を持つイースト菌が塊をつくる。イースト菌が塊を作るとき、外側の細胞は内側の細胞を毒素や環境的ストレスから守るため、自らを賭して意図せず利他的となる。
緑-のき遺伝子を保有することが示されてきたイースト菌とアメーバーは、いかに協調するかを明瞭に説明する助けとなるので、微生物系のパワーを物語る: Hamiltonは、それらが発見される遥か前に、それら遺伝子の存在を確信していた。
シロアリからミーアキャットまで、数えきれない生物種が協調の研究の機会を与える。「社会性の起源は、単一の説で説明できないようだ、」とNCSUの Huntは言う。「社会性は、多細胞性と同様に様々な分類群(taxa)で無数にみられ、多くの異なるレベルの統合に到達した。」
Pennisi E On the Origin of Cooperation Science 325: 1196 Sep 2009
貼り付け終わり。
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