第一級資料の宝庫、
リー湘南クリニック院長ブログ『異端医師の独り言』さんより転載。じっくりと味わいたいので3回に分けて貼り付けます。貼り付け開始。
2009年09月01日
☆☆★ 対数シリーズ①~③①☆腎機能と対数 腎機能を表す代表選手は、血中クレアチニン(Crt)と BUN(血中・尿素窒素)濃度。Crtは筋肉の最終代謝産物で、毎日一定量が作られ、腎臓から捨てられる。
だから、腎機能が悪くなると血液中の Crt濃度(mg/dl)が高くなる。僕が 6年間診ている慢性腎障害の Tさん(83歳)、初診時に前医での 10年間にわたる Crtの記録があり、縦軸に Crt値を「対数」で、横軸に時間をプロットすると彼の予後(いつ透析が必要になるか)を予想できる。
Crtと時間の関係は、直線上に並び(正確には、回帰分析で有意な相関を得る)、その直線の傾きから Crt値 10以上(血液透析が必要)になる時間を計算できる。
Tさんに透析が必要となるのは、150才と計算され、予想通りの経過をたどっていた(が、2008 年、1月以来、来院されない)。ただ、腎障害に基づく症状が出現したら、Crtが、10以下でも透析をはじめる。
ところで、関数計算機で Crtの対数値を求めるのも一法だが、「100/Crt」で対数計算が済み、おおよその腎機能を算出できる。
例えば、血中 Crt値が 1(mg/dl)なら「100/1」=100で、腎機能は約 100%。Crt値が 10なら「100/10」=10、腎機能はおよそ 10%。Crt値が 1→2になると腎機能は 100%→50%、50%減。5→6だと腎機能 20%→17%、たった3%減。Crt「絶対値」の変動が 1でも「対数」で観ないと意味がない。(より正確に、腎機能を知るには、尿中の Crt濃度を求める)
いつか記した、北里大学病院・泌尿器科の遠藤忠雄准教授。彼は腎移植の第一人者としてもてはやされていたが、Crt値の絶対値と対数値の違いを知らず、腎移植後 Crt値が 2になってもボーとして、6→7→8になると大騒ぎをし、免疫抑制剤を増量していた。当時、腎移植には科学の欠片もなく、泌尿器科入局後、僕は「移植チーム」を辞退した。
ちなみに、BUNも腎機能が悪くなると高くなるが、消化管出血でも高くなる。Crt値に比べ、BUNが異常に高くなる場合、両側の尿路通過障害を疑う。BUNは、分子量が小さいため、尿管から再吸収されるためにそうなる。
貼り付け終り。
- 関連記事
-
« ★命を託している医療・薬剤の実体が知りたい その108 ☆☆癌細胞の増殖と対数 l ホーム l ★命を託している医療・薬剤の実体が知りたい その106 ☆ 慢性疼痛のより有効な治療に向けて »