第一級資料の宝庫、
リー湘南クリニック院長ブログ『異端医師の独り言』さんより、転載します。 貼り付け開始。
2010年07月01日09:42
☆ 慢性疼痛のより有効な治療に向けてカテゴリ
一流論文の全訳5月号のランセット誌に掲載された編集室コメントの全訳です。
慢性疼痛患者は多く(人口の約 15%)、難解で(コンサルテーション比は 5倍に増え)、そして費用がかかる(2002年、英国での損失は180億ポンド)。重い社会負担にもかかわらず、結果は失望的である;症状はうまくコントロールされず、専門家による治療はまれで、治療はしばしば長期にわたり、そして自殺のリスクは増加した。だから、4月に出版された「癌に関係しない慢性疼痛の治療に関する、アメリカ麻酔学会の新しいガイドライン」は歓迎に値する。
このガイドラインは、1997年に出版された重症患者(a tertiary-care population)を治療している麻酔科医への推奨を改訂したものである。
以来、治療法はあまり変化して来なかったが、態度は劇的に進化した。今や慢性疼痛は、機能とQOLへ及ぼす影響を理解するために構造化された、患者毎アのプローチを必要とする複雑な生物心理社会(biopsychosocial)現象とみなされている。
治療は、ますます多モード(multimodal)になり、多くの学問領域にわたるチームにより行われるようになってきた;原因を究明するより、むしろ症状緩和を目指して。目的は、疼痛を完全にコントロールできないとしても、最小の副作用で、ベストな達成し得る結果である ; そして、社会的再統一および切り詰めたヘルス・システムの促進である。
新ガイドラインは、過去の疼痛に関する研究の弱さを指摘し、エビデンスに基づくべきであることを主張しない。それにもかかわらず、有効性に関するエビデンス乏しくても幾つかの治療法、そして他の無視されている明らかに無効な治療法に継続的にお墨つきを与えることは、最良の治療は最良のエビデンスを伴うと期待されている時代にそぐわない(sits uncomfortably)。
恐らくその理由として、ガイドラインのコンサルタント達は、推奨は実践にわずかな変化を及ぼすと信じている。それに対して本誌は、ガイドラインにある慢性疼痛の治療を3つの方法で変え得る、また変えるべきだと考える(argue)。
第一に、知識格差を明らかにすることにより、研究の文化を教え込む。
第二に、臨床試験が諸疑問に答えを与えるように治療法を標準化する。
第三に、結果を種々の方法で定期的に測定することにより、ガイドラインの目標を評価する。
次のガイドラインに知識を与えるために、より良いエビデンスがなければ、William Morton(エーテル麻酔の創設者)の碑文「科学を実践する人たちは、疼痛のコントロールを手中にする」のは、現実とならないだろうと語る。
Towards better control of chronic pain Lancet 375: 1754 May 2010
貼り付け終り。
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