膀胱炎の第一選択薬「バクタ」は相当に旧い薬でお安い、だからメーカーはバクタよりも新薬を使ってもらいたい。日本の処方集にバクタについて、
「血液障害、ショック等の重篤な副作用が起こることがあるので他剤が無効又は使用できない場合にのみ投与を考慮」と朱で記されている。
かつて、近隣の薬局が、そんな説明を患者にするから、患者さんから「そんな薬を飲んで大丈夫ですか」とよく質問された、うんざり。僕が処方するのは、正確には「バクタ」のジェネリック(後発品)。
ジェネリック医薬品 人気薬品の特許が切れると、後発品メーカーが同効薬を製造し、これをジェネリック(後発品)という。薬価は先発品の 1/5とか 1/10とかなり安く設定される、したがい患者負担も軽減される。
厚労省は「医療費抑制のためジェネリックを普及しましょう」とポーズをとるが、弱小・後発品メーカーなんかに頼まれても天下りしたくない。世論をかわすため、大手メーカーが困らない程度に後発品をおよがしているのでしょう。
後発品メーカーには、接待する余裕はない。接待してくれないメーカーの薬を処方する医者は、よほど奇特か変態か異端。かくして、ジェネリック薬のシェアーは遅々として広がらない。あなた、主治医にジェネリックに替えられないのですかと、そっと、ご相談してみてはいかがですか。
うちは、全てジェネリックを処方します。処方箋の薬品名には先発品を記し、「後発薬品へ変更可」にする。これは、「後発品を処方してください、先発品の使用不可」の意味なのです。人気薬品には数多くのジェネリックがあり、いちいち後発品の一つを指定していたら、薬局さんの在庫管理が追いつかない。だから、どのジェネリックにするかは薬局に任せています。
5年ほど前、あろうことか、複数の薬局が、私に無断で先発品を処方していた。かかる薬局は、キックバック(医師に薬剤処方を依頼し、裏金を渡すこと)で有名なのです。
薬事委員会 北里研究所病院(港区)時代、薬事委員をやらされた。薬事委員会の主な目的は、採用薬を決めること、や院内在庫を減らすこと、そして副作用情報に周知することなど。
だから、新薬が出ると、メーカーが薬事委員にじり寄って来る。当時、医薬分業が提唱され、院外処方箋を発行すると処方料をいただけるようになった。
1剤でも、10剤処方しても。メーカーに振り回されにくいように、薬事委員会で、中堅を中心に処方を院外にしようという機運が高まった。そこに、眼科の中野部長(当時)が医局会の席で訳の分からない「患者が薬局に薬をとりに行く時、交通事故にあったら誰が責任をとるのか」と捲くし立てて、院外処方箋案はぽしゃった。以来、院内処方箋。
私立病院ならどこもそうだろうが、上層部は売上高の多い医師を評価する。当時は気付かなかったが、内科医達が手っとり早く売上を誇るには大量処方、僕が信頼していた内科・熊谷先生の処方箋を見たら 12種類、驚いた。
また、薬の値段が高いほど売り上げがあがる。薬事委員会で「一流メーカー品の方が安心して使える」という変な理屈がまかり通っていた。安いジェネリックを処方すれば、患者の負担軽減になるという発想は誰にも無かった。
北里研究所病院の HPを覗いてみたら、一人の例外を除いて、売り上げ高を誇った勝ち組み(?)内科医達が部長に名を連ねている。
接待漬けの内科医達は、メーカーに言われるままに新薬を採用していた。ある日、僕が執拗にクラビット採用に反対したが(既採用のタリビットと本質的に同じなので)、採用になってしまった。
薬屋の営業マン達が、クラビット採用の提出者・
鈴木医師(現・呼吸器内科部長)を取り囲んでペコペコしていた。
リー湘南クリニック (2008年4月の記事、校正)
貼り付け終り。
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