前半の記事では、人類学者・解剖学者の長谷部 言人(はせべ・ことんど)の誕生日をきかっけに、日本列島人の起源を探った3つの代表的な説を振り返りつつ、現代の視点から検証してみました。
引き続き、現代の生物遺伝情報の担い手であるDNAを利用した研究について見てみます。解説は、『図解 人類の進化』の編著者・斎藤成也さんです。
*この記事は、ブルーバックス『図解 人類の進化』より、内容を再構成してお届けします。
東ユーラシアにおける日本列島人の遺伝的位置
尾本と斎藤(1997)は、日本列島人のあいだの遺伝的な近縁関係を調べるために、25遺伝子の遺伝子頻度データを用いて、アイヌ人、沖縄人、本土日本人(ヤマト人)、韓国人の4集団の遺伝距離を推定しました。
尾本と斎藤(1997)は、日本列島人のあいだの遺伝的な近縁関係を調べるために、25遺伝子の遺伝子頻度データを用いて、アイヌ人、沖縄人、本土日本人(ヤマト人)、韓国人の4集団の遺伝距離を推定しました。
この結果を系統ネットワークで示したものが図「東アジア4集団の系統ネットワーク」です。中央にある長方形の横の辺はアイヌ人・沖縄人グループと韓国人・本土日本人グループとの違いを、縦の辺は、アイヌ人・韓国人グループと本土日本人・沖縄人グループとの違いを示しています。長さは遺伝的違いに比例して描いてあります。
次に頻度が高いハプロタイプ2は、同じ日本列島に分布する沖縄とアイヌの集団では見いだされず、朝鮮半島から中国北部にかけてのみ、数%の頻度で見いだされます。
ハプロタイプ4は、沖縄人でもっとも高い頻度を示し、他の東アジア集団でも1%前後の頻度で見いだされました。東アジアに分布するいくつかのHLAハプロタイプの頻度を比較することによって、これらが日本列島へ、図11-1の経路1、4、5、および経路6を通って伝えられたことが徳永勝士によって推定されています。
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こうした研究方法の進展により、日本人の起源についても新たな知見が見えてくるようになりました。
日本人起源説は、さきに紹介した3つの日本列島人起源説から、現在最も有力な「二重構造説」へとつながっていきます。
日本列島人にのみならず、誕生、絶滅、拡散を繰り返してきた人類進化の全貌を、執筆陣それぞれの研究成果も踏まえて解説しているのが、ブルーバックス『図解 人類の進化』。わたしたちはどこからきたのか ご興味ある方は、ぜひ一度お手にお取りいただければと思います。
編・著/斎藤 成也 解説/海部 陽介・米田 穣・隅山 健太
化石や遺伝子の研究から、われわれ人類の進化の過程が明らかになってきました。第一線の研究者たちが、進化の基礎からゲノムの話題まで、豊富なイラストを使って、初心者にもわかりやすく解説します。