タマちゃんの暇つぶし

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■大流行の始まりか…「麻疹（はしか）」

講談社：2023.06.08大流行の始まりか…「麻疹（はしか）」の病原体「麻疹ウイルス」。免疫細胞を破壊して、他の免疫まで白紙に戻す？より転載します。

貼り付け開始、

https://gendai.media/articles/-/111103

「麻疹（ましん・はしか）」の国内感染者の増加が警戒されています*。

麻疹とは、麻疹ウイルスによる急性熱性発疹性感染症で、日本では「麻しん」として感染症法に基づく五類感染症に指定されて即時届出の対象となっている感染症です。感染力が極めて強い上、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症すると言われています。

かつては毎年春から初夏にかけて流行が見られ、とくに2007〜2008年にかけて若い人を中心に大流行しました。その後、ワクチン接種などが功を奏しほぼ感染者数は激減し、まれに海外輸入例が見られる程度になりました。

しかし、新型コロナ感染症流行によって、流行中のワクチン接種の接種控え（免疫の低下）、流行後の人の往来の活発化で（ウイルス流入のリスク増加）、感染者が増えることが懸念され、厚生労働省も注意を呼びかけています。

では、この麻疹を引き起こす麻疹ウイルスは、どのような特徴があるのでしょうか？　その感染力の強さの秘密とは？　その生態を見てみましょう。

＊参考：2023年5月現在12人［2020年、2021年の年間感染者数は、それぞれ6人］国立感染症研究所の「2023年第20週の速報」より）

・本記事は、『最小にして人類最大の宿敵ーー病原体の世界』より、内容を再構成してお届けします。

伝染しやすいウイルス

麻疹は、麻疹ウイルス（measles virus）によって引き起こされる急性感染症です。発熱や咳などの風邪症状後、全身に赤い発疹が出ます。この発疹が「麻の実」を思わせることから「麻疹」の名が付きました。なお、別名の「はしか」は、発症中に皮膚や喉が痛痒くなることから「チクチクして痒い」ことを意味する「はしかい」に由来します。

麻疹ウイルスの電子顕微鏡写真　photo by gettyimages

日本では、平安時代中期（998年）に初めて麻疹が流行したといわれています。以来ずっと流行がつづき、昔の人にとっては誰もが感染するありふれた病気でした。人が一度は経験することを「はしかのようなもの」と喩えたり「はしかに罹って一人前」という言葉もあるほどです。

しかし当時の致死率は５〜30％に及び、痘瘡（とうそう）についで多くの日本人の命を奪った感染症です。運良く生きながらえれば終生免疫を獲得するため、痘瘡の「美目定め」に対して、麻疹は「命定め」……子供が生きていけるかどうかの命運を定める……とも呼ばれていました。

これほど流行した理由には、麻疹が極めて伝染しやすいことが挙げられます。空気感染が可能なことに加えて、症状が出る前に感染者の呼気や咳などにウイルスが排出されるためです。予防接種などの対策をとらない場合、患者１人から12〜18人にうつると言われ（基本再生産数。インフルエンザで１〜３人）、数ある伝染病の中でもダントツです。

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次ページ：二段構えの生存戦略

巧妙な「麻疹ウイルス」の生存戦略

これまでの研究から、麻疹ウイルスの受容体になる2種類のタンパク質が発見されました。一つは、マクロファージやリンパ球などの免疫細胞の表面にあるSLAM、もう一つは気道の上皮細胞と上皮細胞の隙間にあるネクチン4という、2つの膜タンパク質です。

吸入された麻疹ウイルスは肺の奥まで到達し、まずSLAMを介して、肺胞マクロファージや樹状細胞に感染して増殖します（図：麻疹ウイルスの感染から排出まで）。その後、ウイルスは血流に乗り、B細胞やT細胞などのリンパ球にも感染しながら全身に拡散し、脾臓や扁桃などのリンパ組織で増殖します。

やがて感染細胞が死滅して白血球減少を起こし、HIV感染と同様に、免疫能が急激に低下します。全身の免疫機能を一時的に強く抑制することで、ウイルスが増殖しやすくなるのです。

麻疹ウイルスの感染から排出まで

そして全身に感染が広まった頃、今度はネクチン4を介して気道上皮細胞に感染します。気道上皮細胞で増えた麻疹ウイルスは、もっぱら管腔側、つまり気道の中に出芽する性質があり、呼気や咳と共に大量のウイルスが体外に排出されます。

麻疹ウイルスは、受容体を使い分ける二段構えの機構で、体内での増殖と体外への放出を効率よく行っているのです。

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次ページ：恐怖…抗体が消失する「免疫記憶喪失」

麻疹が起こす「免疫記憶喪失」

現在の麻疹の致死率は、日本などの先進国では0.1〜0.3％程度ですが、発展途上国では5％を超えます。死因のほとんどは免疫抑制によって生じる細菌性肺炎などの合併症によるものです。

感染後1ヵ月ほどで白血球数はほぼ回復しますが、最近の研究では、免疫抑制の影響はもっと長く続き、正常に戻るまでに2〜3年ほどかかるという報告もあります。

そもそも病原体が体に侵入してくると、免疫細胞のB細胞やT細胞が活性化して病原体と戦いますが、このときその一部は「免疫記憶細胞」になって残ります。そして、再び同じ病原体が侵入すると、初回に比べて素早く、かつ強力に免疫を誘導できるようになります。

長期の免疫抑制は、この免疫記憶細胞が麻疹ウイルスにより死滅したためと見られ、それ以前に感染した病原体に対する免疫が失われて、再感染しやすくなるのです。この現象は免疫記憶喪失（immune amnesia）と呼ばれています。

実際に麻疹感染後には、体内に保有する抗体の種類（抗体レパートリー）が平均
20％、最大で73％も消失することがわかりました。

反ワクチン運動と麻疹撲滅への道

日本では、1989年、麻疹、風疹、ムンプス（おたふくかぜ）の3つのワクチンが、単独接種から3種混合の国産MMRワクチンに切り替わったのですが、無菌性髄膜炎を起こす人が多発して中断されました。原因が当時の国産ムンプスワクチン株と判明して、単独接種に戻りましたが、ワクチンへの不信感から接種率は低迷を続けます。

このため免疫を持たない人が多かった2001年と2007～2008年に全国的な麻疹の流行が起きました。

そのため、海外では多くの国が麻疹清浄国になっていた当時は、日本には「はしか輸出国」「はしか後進国」の不名誉な称号が与えられていました。2006年に小児を対象としたMRワクチン（麻疹・風疹混合ワクチン）定期接種が始まり、また2008年の流行を機に中高生を対象とした5年間の特例接種が行われたことで、麻疹患者が激減し、2015年には国内で患者の自然発生が見られない「麻疹清浄国」に認定されました。それ以来、国内では根絶状態にありますが、今回のような海外からの輸入症例がときどき発生しています。

MMRワクチン　photo by gettyimages

ところが現在、状況は逆転し、欧米でワクチン接種率が低下して麻疹が再流行しています。「MMRワクチンが自閉症の原因」と主張するショッキングな論文、通称「ウェイクフィールド論文」*が引き起こした騒動により、反ワクチン運動が起き、それが長く影響を及ぼしたのです。

WHOは、2019年「健康に対する世界的脅威」のトップ10に「ワクチン忌避」を挙げて状況改善を呼びかけています。

麻疹が根絶されるその日が、一日でも早く訪れることを願ってやみません。

＊：1998年にイギリス人医師、A・ウェイクフィールドが医学雑誌『ランセット』に投稿した論文。その後、ウェイクフィールドが特許を出願していた新型ワクチンを売り込むための捏造だったと発覚して、論文は撤回。彼自身は医師免許を剥奪された。

　　　◇　　　

このように、なかなか巧妙な戦略をとる麻疹ウイルスですが、麻疹ワクチンが存在し、根絶可能な感染症に挙げられています。これまで罹患の経験もなく、ワクチンも未接種の方は、医師に相談してみるとよいでしょう。

また、「麻しんにかかったかもしれない」と思ったら、かりつけ医や医療機関に電話等で症状を伝え、受診の要否や注意点を確認してから、その指示に従うようにします。記事でのご説明の通り、麻しんウイルスは強い感染力を持ちます。医療機関へ移動時などは、周囲の方への感染を防ぐためにもマスクを着用するようにしましょう。

最小にして人類最大の宿敵病原体の世界――歴史をも動かすミクロの攻防

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病原体たちが進化の過程で身に付けた、さまざまな感染戦略、生存戦略を紹介。いずれも驚くほどうまくできたしくみで、なかなかエキサイティングな世界です。病原体について知っておくことが、次なる病原体との戦いの備えになるかもしれません。

貼り付け終わり、

★どんなウイルスも不活化出来る：ワクチン神話に騙されるな！
https://1tamachan.blog.fc2.com/blog-entry-8689.html

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