老後のために少しでもたくさんの年金をもらって得したいと思うのが多くの人の本音だろう。世間では「最大84%増額」する繰り下げ受給制度が注目を浴びているが、じつは、年金が増えるのは繰り下げ受給だけではない。
中でも注目されるのが「加給年金」で、ある特定の家族構成の人にだけ加算されて年金が約40万円増額するケースもある。『60歳からの得する!年金 働きながら「届け出」だけでお金がもらえる本』の監修者で特定社会保険労務士の小泉正典氏に解説してもらった。
加給年金は、対象となる配偶者が65歳に到達するまで、子どもが18歳の年度末を迎えるまで支給されます。支給年数に制限はなく、夫婦や親子の年齢差が離れているほど受給年数が多くなります。ですから、たとえば妻が15歳年下という場合、夫が65歳から老齢厚生年金を受給すると、約40万円の加給年金が15年間にわたって加算されることになります」(小泉先生)
ということは、若い妻と結婚し、遅くに子どもをもうけた人ほど年金が多くなるということか。そうなると「年下妻がいる人がうらやましい」とぼやく人もいそうだが、じつは、そこには「大きな誤解」があると小泉先生は言う。
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小泉先生によれば、妻のほうが年上で厚生年金加入歴が20年以上ある場合、夫の年収が850万円未満または所得が655万5000円であれば支給対象になるという。
「加給年金の配偶者の要件として“生計を維持されている”という要件があるため、“共働きはもらえない”と思い込んでいる人も多いのですが、男女関係なく収入要件をクリアしていれば、共働き夫婦も支給対象です」
妻が年上でももらえる、共働きでももらえる――となると、かなり広範囲の人が加給年金の加算対象となるのではないだろうか。
しかし、この加給年金が絶対にもらえない夫婦もいる。
加給年金が「もらえない人」一覧
「加給年金は、夫婦のどちらかが65歳になったとき、一方が年下で65歳未満でないともらえません。つまり、厚生年金加入期間が20年以上あり、収入要件等を満たしていても、同い年夫婦は年の差がないためもらえません。また、加給年金は厚生年金の制度であるため、いくら年の差があっても厚生年金加入歴のない自営業夫婦は対象外です」
加給年金がもらえない夫婦をまとめると、次のようになる。
□厚生年金の加入期間が20年未満の夫婦
□自営業夫婦
□年下の配偶者の年収が850万円以上または所得が655万5000円以上
「最近は、繰り下げ受給で年金が増えるという話題をよく耳にすると思いますが、加給年金は支給される期間が決まっているため、繰り下げ受給ができません。
たとえば、夫が65歳になったとき、妻が年下でも、夫が老齢厚生年金の繰り下げ受給をすると、繰り下げ待機中の加給年金は支給停止になります。妻との年齢差が5歳という場合、夫が70歳まで繰り下げ待機をすると、妻が65歳に到達してしまうため、198万7500円(5年分の合計)をもらいそこねることになります」
加給年金を取り逃さないための「コツ」
厚生年金の制度である加給年金は、老齢厚生年金とセットで受給しないともらえない。老齢厚生年金を繰り下げて加給年金だけもらうということはできない。
しかも、年下の配偶者が65歳になる前にもらわないと、もらえなくなってしまうので注意が必要だ。
加給年金を受給するか否かは、家族の経済事情によるということだ。
「もらいすぎた人」の注意点
そして、最後にもうひとつ、共働き夫婦限定で注意しなければならない加給年金の支給停止ルールについて、小泉先生が教えてくれた。
「加給年金は、共働き夫婦でももらえるという話をしましたが、じつは、年下の配偶者が65歳より前に支給される特別支給の老齢厚生年金(特老厚)の支給対象者の場合、特老厚をもらい始めると加給年金は支給停止になります。
特老厚は、1961年4月1日以前生まれの男性と1966年4月1日以前生まれの女性が対象です。加給年金は特老厚がはじまっても自動的には止まりません。配偶者が特老厚を受給するときは『老齢・障害給付加給年金支給停止届』の提出が必要になる場合があります。手続きせずにもらいすぎた場合、加給年金をあとで返還することになるので注意が必要です」
一方で、厚生労働省がモデルとしている「会社員+専業主婦」といった組み合わせの夫婦も激減し、夫も妻も働きながら年金をもらう人が増えることが想定される。
これから年金をもらう世代は、小泉先生監修の教えを参考に、自分たちにあった年金のもらい方を検討してほしい。
さらに連載記事『年金は「60歳、65歳、70歳、75歳」の“いつから”もらうのが「一番お得」なのか…その「意外すぎる答え」がわかった!』では、年金を“いつから”もうるのが得するのかの“意外な答え”についてレポートしよう。
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