今回は「日本に外交ナシ!大借金国なのに首相外遊では巨額の血税バラ撒き。国民経済は切り捨てたうえに増税……こんな狂気のスタンスでも自民党支持率は安泰」という問題意識で、その闇をえぐっていきます。(『 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 』)
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※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年5月29日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:神樹兵輔(かみき へいすけ)氏
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。
「海外バラ撒き」を続ける日本の首相
「外交のアベ」を標榜し、「地球儀を俯瞰する外交」などと大仰に唱えていたのが、今は亡き安倍晋三元首相でした。
第1次(2006年9月~07年9月)、第2次(2012年12月~20年9月)の計8年7カ月に及ぶ最長首相在任記録をつくった安倍晋三元首相は、とりわけ「外交」には熱心で、せっせと外遊に励んでいたものです。
そして、首相在任期間中には、総額60兆円超ものバラ撒きで98ヵ国(延べ約200ヵ国)もの外遊を行っています。
単純に年間平均すると、毎年7兆円もの巨額の資金を世界にバラ撒いていたのです。7兆円といえば、毎年の消費税率換算で3.5%分にも相当する金額です。
この金額は、2018年時点での参議院本会議において、社民党の福島瑞穂議員が、安倍首相の海外援助額を単純加算した外務省からの回答が54兆3,621億円だった――と公表したことで明らかになっています。
安倍元首相の外交は「やってる感」だけの国民向け演出
また、安倍元首相は、ロシアのプーチン大統領とは通算27回もの日露首脳会談を行っています。
そして、「北方領土返還」と「平和条約締結」を目指し、ロシアへの経済協力という名での、日本からの官民合わせた支援額は、ゆうに3,000億円を超えていたのです。
「ウラジミール」「シンゾウ」と呼び合うほどの親密な仲だったと喧伝されましたが、北方領土返還については4島一括返還要求のはずが、いつのまにか勝手に2島先行返還要求にまで譲歩していました。
結局、ロシアのプーチン大統領とは北方領土返還問題で、まるで交渉相手にさえ成らずじまいで、ロシアのウクライナ侵攻の際、安倍元首相は「ロシアには騙された感があった」などと傍観者丸出し然とした発言だったのが印象的でした。
プーチン大統領に声明を出して「ウクライナ侵略をやめろ」などと諫めるどころでもなかったのです。
プーチン大統領にはさんざん、たかられた挙句、日本の総合商社のサハリン権益まで脅かされて、これまでの27回の首脳会談の成果はゼロどころか、マイナスにさえなった――という有様でした。
こうした外交についてのマイナス成果は、自公政権とどっぷり癒着のマスメディアからの批判さえ、もちろんありません。
今では、自民党全体が米国の指図に従って、ロシア制裁の輪にも加わっています。とっくにロシアとの友好関係は消え失せてしまったのでした。
これはもう、まともな外交もへったくれもなく、「外交してる感」の国内向け演出にすぎなかった――という体たらくです。
日本はまるで世界のATM。宗主国アメリカへの貢ぎ金も莫大な金額に
また、米国兵器の爆買いにいたっては、近年では毎年数千億円の血税が費やされています。
これは、1954年に結ばされたFMS協定(日米相互防衛有償援助協定)による、一方的な米国兵器購入の義務付けによるものですが、現在ではすでに6兆円もの後年度負担の借金まで背負っている状況です。
そして、岸田首相にいたっては、国会審議も経ずに閣議決定で安保関連3文書を取りまとめ、専守防衛の平和憲法をもすっ飛ばして「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有も明記してしまいました。安倍元首相以上に輪をかけて軍拡志向どっぷりです。
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呆れたことに、こうした軍拡に正面切って反対している野党は、日本共産党とれいわ新選組のたった2党だけというお寒い現状です。
今年から5年間で防衛費の総額を43兆円積み増して、現行のGDP比1%の防衛費を2%とするべく、2027年度の年間防衛費では11兆円(軍事費は世界第6位から世界第3位へ)にすると決め、国会論議もないまま、アメリカのバイデン大統領への報告に馳せ参じています。
そして、アメリカの巡航ミサイル・トマホークを400発購入するべく、今年度予算にも2,113億円を計上したのでした。
こうした宗主国アメリカへの日本からの貢ぎ金や、日本の歴代総理の毎回の外遊での気前のよい血税バラ撒きは、度を越していますが、もちろん国会審議など経ていません。
まるで、日本は世界から見るとATMのような存在になっているかのようなのです。
岸田首相も「外交やってる感」で存在感を高めたい?
現下の岸田文雄首相も就任1年7カ月ですが、国会閉幕のたびに、せっせと首相専用機で外遊しています。
すでに東南アジア、豪州、ヨーロッパ、米国、インド、ウクライナ、アフリカなど、18ヵ国を歴訪し(延べ27ヵ国)、無償・有償の政府開発援助(ODA)だけでも、18兆円規模のバラ撒きや数年に及ぶ援助の約束を行っています。
もちろん、繰り返しますが、バラ撒きの内容や金額についての国会審議などは経ていません。
また、超低金利の有償援助(0.1%)でも、数年後にはチャラにする返済免除事例も数多くあります(東南アジアやアフリカにはすでに90ヵ国以上に、数年ごとに数兆円規模の公的債務免除を行っています)。
Next: なぜバラ撒ける?一般会計の4倍にのぼる裏帳簿として「特別会計」がある
一般会計の2〜4倍にのぼる裏帳簿・闇会計としての存在が「特別会計」
ところで、外務省の表向きのODA予算は、年間5,000億円規模にすぎないのに、どうして数十兆円単位の巨額のカネを外国にバラ撒くことができるのでしょうか。
そこには、政府の歳入と歳出を取りまとめた「一般会計」とは別の、その4倍以上の規模にも及ぶブラックボックスと呼ばれる「特別会計」の存在があるからです。
なんと、これが未だに13もあるのです(戦前には最大60、戦後にも一時期最大45もの特別会計があり、とりわけ戦前の臨時軍事費特別会計はひたすら膨張しまくり、ついには戦争遂行に駆り立てました)。
ちなみに2022年度の「一般会計」予算(国家予算)は補正後で110兆円でしたが、同年度の「特別会計」の歳出総額は467兆円で、重複分を除いた純計額では218兆円です。
国会で審議が行われる「一般会計」の総額で4倍、純計でも2倍以上もの予算が「特別会計」として計上されているのです。
一般会計はカツカツの財政状況でも「特別会計」は潤沢
「特別会計」とは、いったい何なのでしょうか。
国の会計は、「一般会計」で一体的にとらえられています(単一会計主義)。行政施策の内容が、国会で審議され、国の予算として承認されています。
しかし、国の行政活動が広範かつ複雑化すると、単一会計だけでは、各個の事業状況や資金の流れが見えにくくなるとして、一般会計とは別に特別会計を設けることが認められているのです(財政法第13条第2項による)。
会計を分けることで、特定の歳入や歳出を見えやすくし、特定の事業や資金運用の状況を明確化できる――というのが目的となっています。
とまあ、上述の説明が、「特別会計」における政府・財務省の公式見解なのです。
潤沢なカネの宝庫「特別会計」はブラックボックス状態
しかし、実際には、「特別会計」を設けることで、かえってカネの流れを見えにくくしているのが実態です。
なぜなら、国会で審議された「一般会計予算」も、そこからかなりの金額が「特別会計」にも組み入れられて、特別会計の下では、各省庁が特殊法人を多数つくり、その下にぶら下がるファミリー企業群を差配することで、省益追求の恣意的バラ撒きや、官僚OBの天下りや利権配分の温床となるからです。
会計検査院でさえ、ファミリー企業群には民間企業ゆえにチェックするという手立てもできません。
かつての道路整備特別会計では、日本道路公団(05年民営化)などの特殊法人の下、ファミリー企業が700社も特別会計の先っぽにぶら下がり、公団OBが天下っていました。
こうしたことから、「特別会計」は「ブラックボックス」「裏帳簿」「闇会計」と揶揄されるゆえんなのです。
Next: なぜ国民に増税を求めながら、海外にはお金をバラ撒けるのか?
13種類の特別会計とは?
ちなみに、現時点での13ある特別会計は以下の通りです。
・交付税及び譲与税配布金特別会計
・地震再保険特別会計
・国債整理基金特別会計
・外国為替資金特別会計
・財政投融資特別会計
・エネルギー対策特別会計
・労働保険特別会計
・年金特別会計
・食料安定供給特別会計
・国有林野事業債務管理特別会計
・特許特別会計
・自動車安全特別会計
・東日本大震災復興特別会計
一見しただけでは、何の事業なのか、よくわからないものも多いのです。
しかし、この中の167兆円規模の外国為替資金特別会計や197兆円規模の年金特別会計の剰余金から、外国へのバラ撒き資金も横流しさせているのです。
「特別会計」の闇は深い……
この「特別会計」という潤沢なカネを使って、国内では「一般会計予算」で国民経済に対しては渋い顔をして増税が必要――などとのたまう政府も、外国には気前よくバラ撒きができるのです。
小泉純一郎内閣(2001年4月~06年9月)の時の財務大臣・塩川正十郎氏が特別会計を揶揄した有名なセリフに、「母屋でおかゆをすすっている時に、離れですき焼きを食っておる」は名言となりました。
母屋が「一般会計」で、離れが「特別会計」を指すことは言うまでもありません。
また、かつて特別会計の闇や官僚の腐敗を厳しく追及していた旧民主党の石井紘基衆議院議員は、特別会計の徹底調査を行い、膨大な資料を収集するなかで、暴漢に刺殺されるという悲劇に見舞われています(2002年10月25日)。
事件の数日後の10月28日に予定されていた国会質問を前に「これで与党の連中がひっくり返る」とまで発言していたことと相まって、この事件は謀殺された疑いもある――といわれていたのです。
実際、石井衆議院議員の鞄には国会質問用の資料が入っていたのに、事件現場の鞄からはなくなっていたこともあり、なおのこと、これは不可解な事件とされています。
これほどまでに、特別会計や官僚たちの腐敗、政治行政の闇は底知れず深いのです。
その後、石井氏が残した膨大な特別会計などの政府追求の証拠資料は、他の民主党議員によって読み解かれることもなく、倉庫に眠っているそうなのですから、何とももったいない話なのです。
石井議員のような気骨ある人物は、民主党はおろか、国会には誰一人いないのでしょうか。
首相の外遊時の「バラ撒き」は大企業への政治献金の見返り
ところで、日本の首相が外遊で行う、外国への気前のよいバラ撒きは、超低金利の貸し付けである有償資金供与の場合、「タイドローン」と呼ばれる「紐付き融資(資金使途を限定)」が少なくありません。
これによって、結果的に日本の大企業の輸出が増え、現地事業を主導する日本の大企業も潤う仕組みが現実にはあるのです。
首相の外遊時には、関係する大企業幹部も多数同行します。
つまりは、日本のバラ撒き外交は、現地国への援助だけでなく日本の大企業をも潤す効果もあるわけです。
したがって歴代首相は、自民党が大企業から政治献金をもらっている恩恵もあって、バラ撒き外遊に邁進せざるを得ないのです。大企業がエビでタイを釣る要領で政府からのカネを得ているわけです。巨額の見返りを考えれば、自民党への大企業の毎年わずか数十億円の企業・団体献金額など、はした金でしょう。
むしろ、外国への日本国民の血税のバラ撒きは、外国のための援助というより、日本の大企業へのキックバックのためにある――ともいえるのです。
日本の国民生活が苦しいことは全くおかまいなし――となる政治のカラクリがよくわかるかと思います。
政府・自民党と官僚の上層部は、表向きにおいては「一般会計」で財政の厳しさを装いながら、つねに増税をちらつかせ、実質は潤沢な「特別会計」でやりたい放題をやっているわけなのです。
こうした特別会計の闇を暴く、刺殺された石井衆院議員のような、気骨ある真摯な改革政治家の登場を望んでやまないゆえんなのです。
与党も野党も「馴れ合い」では、近い将来に国家破綻のツケが回り、敗戦時のような国民の窮乏が繰り返されることでしょう。
特別会計を白日の下にさらさなければいけないのです。
次回は「成年後見人制度の利用はNG!」ということで、この闇をえぐっていきます。現在、認知症高齢者に対しては、行政側が半ば強制的に成年後見人を付けることさえできるようになっています。そして、家庭裁判所が任命する「法定後見人」はほとんどが、司法書士や弁護士といった法律専門職です。
次回はそのカラクリを詳しく解説いたします。それでは、次回をお楽しみに!どうぞご期待くださいませ。
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※本記事は、神樹兵輔氏のルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年5月29日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読を