日本人が思っている以上に海外での「日本食ブーム」は広がっている。筆者がオフィスを持つマレーシアでは、いま日本食レストランが驚くほど増え続けている。
4月には日本を代表するブランド牛肉「神戸ビーフ」も初輸入。マレーシアは人口3270万人うち、約7割がイスラム教徒で、彼らが食べるのに必要な「ハラル認証」の基準を満たした食肉処理施設が設置されたうえでの進出だ。
レストランのみならず、イオンやドン・キホーテ、業務用スーパーなど日系マーケットが続々とオープンしている首都のクアラルンプールで最近流行しているのは「牛串」だ。
これを筆者は「日本食第三世代」と呼んでいる。日本食を楽しんでいる人々にもジェネレーションの差があり、それを3世代に区分けしてみた。
第一世代は、日本食レストランが海外に行かないと食べられなかった時代に日本食を好きになった人々。次に、高級店を中心に日本食レストランが続々とオープンしたことで、その味を知ったのが「第二世代」。
ここまではわりと裕福な層が主体だった。しかし、いま日本食レストランに集まる人々は、物心ついたときにはすでに格安の日本食レストランが身近にあり、日常的に日本食を食べるようになった「第三世代」なのである。
【後編】『マレーシア人女性が「日本の定食」を食べて絶賛…日本食ブームが東南アジアで止まらないワケ』では、「第三世代」の女性に詳しく話を聞いた。
日本人が思っている以上に海外での「日本食ブーム」は広がっている。筆者がオフィスを持つマレーシアでは、いま日本食レストランが驚くほど増え続けている。
【前編】『マレーシアで日本の「寿司」が“高級食”から“国民食”になっている「驚きの理由」』で説明したように、近年の経済発展に伴い収入を安定させた都市部などでは、日本食が日常的な食事の選択肢のひとつになり、客層が「第三世代」になったという。後編となる本記事では、その第三世代の女性に日本食への考え方を聞いた。
「第三世代」の日本食への考え
クアラルンプール生まれの30代、ファイナンス関係の会社に勤めているジェニー・リウさんは、中華系ながら第一言語は英語。中国語やマレー語も日常生活に使えるぐらいは話せるが、親族との会話は基本、英語を使っているという。
「それは私だけじゃないんです。私の世代はちょうど、ドラえもんやクレヨンしんちゃんなど日本のアニメを見て、浜崎あゆみ、宇多田ヒカルなど日本の音楽を聞いて育ったからです。そういう文化から知った日本の人々はスマートで礼儀正しく、キレイ好き。マレーシア人から見て、とてもハイレベルな人に見えました。日本旅行をしたとき、どこの公衆トイレもきれいでビックリしました。
コンビニに行くと店員が笑顔で商品を渡しました。日本では当たり前かもしれませんが、なんてすごい国なんだと思ったんです。もちろん良い面ばかりではないですし、いまはマレーシア人で良かったと思っていますが、日本食は一番の大好物です」
「第一世代」「第二世代」の感覚
彼女の両親、60代のダニーさん、ベティさんにも会ったが、彼らもまた日本食が大好きで、ダニーさんはマレーシアに進出して大人気のラーメン店「一風堂」のファン。ベティさんは複数回、日本旅行をしたことがあり、日常的に食べるほど「サバの塩焼き定食」がお気に入りだ。
夫妻は若い頃、世界各国を旅行した経験があり、最初に日本食の美味しさを知ったのは80年代に行った旅行先の日本でオリジナルを食べたからだった。つまりは「第一世代」に属する。
「日本で築地に行って2万円ぐらいするオマカセを頼んで寿司のおいしさを知ったのよ。その後、クアラルンプールに日本食レストランができたけど、最初は寿司が一貫25リンギ(約750円)もした」とベティさん。
その後、いくらか価格はリーズナブルになって、筆者の指す「第二世代」が主体になった。その時点では、日本食は「月に一度」程度の稀に食べる高級料理の位置づけで、マレーシア人の日常的な「好物」にはなりきれていなかった。
しかし、95年に回転寿司チェーンの「スシキング(寿司金)」がクアラルンプールに登場。
寿司のネタ種類は少ないが、ラーメンや天ぷら、カレーライスなど日本食メニューも揃え、日本の回転寿司と大差ない価格で一気にジャパニーズ・フード・ラヴァーを広げた。現在も100店舗を超える有名チェーンに発展しており、ハラル認証されているためイスラム教徒も楽しめる数少ない日本食レストランの代表格だ。
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