年金は受給開始年齢を遅らせるほど増額し、75歳まで繰り下げると84%も受取額が増額するという話題は、今でもさまざまなメディアで取り上げられている。しかし、75歳繰り下げ受給は本当にお得なのだろうか――。
『60歳からの得する年金 働きながら「届け出」だけでお金がもらえる本 2023-24年 最新版』の監修者で、特定社会保険労務士の小泉正典氏が“繰り下げ受給の落とし穴”から“年金をもっともお得にもらえるテク”までを教えてくれた。
繰り下げ受給で年金を増やそうと考える人は、やみくもに「遅くもらえばいい」というわけではない。「何歳まで働くか」「繰り下げまでのつなぎ資金の準備状況はどうか」「夫婦ならば、どちらの年金をどう繰り下げするか」といったことを前もってしっかりシミュレーションすることが大切だ。
それと同時に、「もらえる権利を先延ばしにする」という心理的な不安を払しょくすることも必要だ。
というのも、繰り下げ受給の年齢をあらかじめ何歳と宣言しておく必要はありませんし、年金は65歳を過ぎればいつでも請求できるのです。
また、66歳以降に年金を請求するときは、もらい方に2つの選択肢があることを知っておくといいと思います」と小泉先生が教えてくれたのが、次の2つの受け取り方だ。
(1)繰り下げ待機をやめた年齢の増額率で年金受給を開始する
(2)繰り下げ増額を選択せず、過去にさかのぼって請求できる年金を一括受給する
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一方、(2)のパターンは、下記の図の例のように、65歳までさかのぼった年金を一括受給できる。
このパターンでは待機した期間分の増額はなくなるが、急にまとまったお金が必要になったという場合には有効な受け取り方といえる。
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70歳以降まで繰り下げ待機した場合は、年金請求を行う年齢の増額率を選択する方法もある。しかし、70代になると健康寿命に到達し、病気などになる確率も高くなる。
長生きするつもりで繰り下げ待機していた人が、がんなどで余命宣告を受け「思っていたより長生きできそうもない」となった場合、この「みなし繰り下げ制度」を活用すれば、「早く年金をもらっておけばよかった!」という後悔も減りそうだ。
次ページ:注意すべきこと
「ただし、70歳以降に年金請求をしないまま亡くなった場合は要注意です。この場合は特例的みなし増額制度は適用されません。遺族が請求できるのは、時効にかからない5年の範囲内の年金で、65歳から受け取る金額です」
次ページ:とにかく得するために
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