親が亡くなり、人が住まなくなった実家がいつのまにか「時限爆弾」になっているかもしれない。法改正で特例措置が使えなくなり、いつのまにか重い税金がのしかかる。さらには売却・解体もできなくなる可能性まで。前編記事「74歳男性が絶句…相続した実家を売ろうとして、不動産屋から言われた「衝撃の一言」」に引き続き紹介する。
実家を売却できなくなった
一方、相続が発生する前の段階から、実家が「空き家」になってしまうケースもある。最も多いのは、介護施設に移る時に、「いつか自宅に戻りたい」と思って家を放置するパターンだ。
千葉県在住の徳永康さん(57歳・仮名)は語る。
「4年前に父が高齢者施設に入居したんです。ただ、山梨県の実家はそのままにしていました」
ところが昨年、徳永さんの元に驚きの連絡があった。なんと実家が放火されたというのだ。
「実家に行くと、1階の窓枠が黒く焦げているのが確認できました。ボヤで済んだから良かったものの、隣家に延焼していたら大変な事態になっていました」(徳永さん)
「地元の不動産業者2~3社に『いくらぐらいなら売れそうか』と聞いてみましょう。自治体が運営する空き家バンクを利用するという手もありますが、結局は買い手がつくかどうかですから、売れ残る可能性もある。
売却が難しそうなら、隣近所に声をかけてみてください。『駐車場にしたいから、更地なら買う』といったケースもあり、100万~200万円程度の解体費用を払って安く譲ったとしても、家を持ち続けて固定資産税を払い続けるより得になるケースが多いのです」(前出・齋藤氏)
最後の手段
相続ではなく、施設への入居などで実家が空いてしまう場合もあるだろう。この時点で売却してもいいが、難しい場合は賃貸に出すという選択肢もある。
「東京、埼玉、神奈川、千葉の都市部の物件なら、NPO法人空き家・空地管理センターが提供する『AKARI(あかり)』の利用が検討できます。事業者の費用負担で内装の改修工事を行い、5年~10年程度借上げて転貸を行う仕組みで、管理の手間と賃貸のリスクを軽減できます」(NPO法人空き家・空地管理センター理事の伊藤雅一氏)
相談窓口は、0120-336-366(9時~17時)だ。
とはいえ、いずれは実家を相続することになる。売れればいいが、現実的にはどうしても買い手がつかない物件も存在する。
手放しようがない不動産について、国も対策に乗り出している。4月27日に開始したばかりの「相続土地国庫帰属制度」は、土地の所有権を手放せる斬新な制度だ。
「一方で、まだまだ新制度を利用するにはハードルが高いのも事実です。建物を解体して更地にしたり、境界線を確定したりする必要があるうえに、負担金も払わなければなりません。それも市街地の宅地なら100㎡で約55万円、200㎡で約80万円と高額です」(税理士・山本和義氏)
新制度は、あくまで「最後の手段」だと考えておいたほうが良さそうだ。むしろ専門業者を頼るほうが、早く確実に土地を手放せる可能性がある。
「買い手がつきにくい物件を預かり、隣地とくっつけて太陽光発電や工場用地として売却する専門業者があるので、そこを頼るという手もあります。ただし、『土地を預かる』といってカネだけもらい、土地を放置する悪徳業者もいるので注意が必要です。ネットを含め評判をチェックしたり、引き取った後の活用法や実績を確認したりして、適切な業者なのか、判断しましょう」(前出・齋藤氏)
とにかく実家は早く手放すこと。重税や、思わぬ出費に見舞われてから悔やんでも、後の祭りだ。
「週刊現代」2023年5月20日号より
貼り付け終わり、
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