その性能の高さが早くも大きな話題となっている、OpenAIが先日新たに発表した対話型AI「GPT4」。多くの人間から職を奪うとも言われる人工知能ですが、当の人工知能はその問題をどう捉えているのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さんが、人工知能による失業者増と社会不安についてGPT4と議論した一部始終を公開。中島さんが次々と繰り出す鋭い質問に、GPT4が具体的な取り組みを上げつつ的確に答えています。
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)氏
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
人工知能が人間から職を奪う問題を、当の人工知能はどう考えているのか
GPT4がリリースされたので、さっそく、人工知能による失業者の増加と、それによってもたらされるだろう社会不安について議論してみました。
私:初めまして。最近、人工知能が人から職を奪い、それが社会を不安定にするのでは、と心配です。
GPT4:初めまして。あなたの懸念は理解できます。最近の技術革新により、人工知能やロボットが人間の仕事を代替できるようになってきていますが、それが必ずしも悪いことではありません。
歴史を振り返ると、技術革新がもたらす仕事の変化は常にあったと言えます。例えば、産業革命によって多くの手作業が機械に置き換えられましたが、それによって新たな産業や職種が生まれ、経済発展に寄与しました。同様に、人工知能やロボットが人間の仕事を代替することで、労働力がより高度なスキルや新たな産業にシフトできる可能性があります。
ただし、この変化に伴う社会的な影響を無視することはできません。一部の人々が失業するリスクがあり、スキルや職種が変わることへの適応が求められます。また、経済格差や教育格差が拡大する懸念もあります。
これらの問題に対処するためには、政府や企業が積極的に取り組むことが重要です。例えば、職業訓練プログラムや教育制度の改革、所得格差の縮小策などが考えられます。
最終的に、人工知能やロボットがもたらす変化は、私たちがどのように対応するか次第で、良い方向にも悪い方向にも進むことができます。社会全体で協力して、技術革新が持続可能な発展につながるよう取り組むことが重要だと考えられます。
人工知能より人間のほうが優れている領域は存在するのか
私:しかし、すでに人工知能が人間よりもテストで優秀な成績を取るようになっており、人工知能が出来ない「より高度な仕事」をできる人は一部に限られるように思います。
GPT4:その懸念は十分に理解できます。確かに、人工知能は特定のタスクやテストにおいて、人間を凌駕する能力を持つようになっています。しかし、人間が持つ独自の能力や特性もまだまだ重要であり、人間が優れている領域は存在します。
例えば、創造性や感性、対人コミュニケーション能力、共感力、倫理観などは、現状の人工知能では簡単には代替できない人間の特性です。これらの能力を活かした職種や産業が、今後ますます重要になると考えられます。
また、技術革新によって、新たな産業や職種が生まれることも予想されます。これまでの歴史からも、技術革新が新しい市場やビジネスチャンスを生み出してきたことがわかります。従って、今後も新たな職種が生まれ、人間が活躍できる場が広がる可能性があります。
ただし、これらの変化に対応するためには、教育や職業訓練の重要性が増すことも確かです。個人は自分のスキルを磨き、新しいことを学ぶことで適応し、政府や企業は、教育制度や職業訓練プログラムを充実させ、広く利用可能にすることが求められます。このような取り組みが、人工知能と人間が共存し、より良い社会を築くための鍵となるでしょう。
私:私が一番心配しているのは、「自分が世の中に価値を提供できない」と感じてしまう人々が増えてしまうことです。「生きがい」を感じることが出来ない人が増えることは、社会をとても不安定にすると思います。
GPT4:その懸念は非常に重要であり、現代社会においてもっとも考慮すべき問題の一つです。技術革新がもたらす仕事の変化や失業は、人々の生きがいや自己価値を脅かす可能性があります。この問題に取り組むために、以下のようなアプローチが考えられます。
これらの取り組みを通じて、人々が自己価値を感じ、生きがいを持てる社会を築くことができるでしょう。技術革新がもたらす変化に対処するためには、政府や企業、個人が協力して取り組むことが重要です。社会全体でこの問題に向き合い、より良い未来を築いていくことが求められます。
民主主義を破綻に導くポピュリズムの横行をどう防ぐのか
私:あなたは綺麗事ばかり言いますが、私が指摘した「懸念」に対して真正面から答えてください。社会から必要とされない人々が増えれば、そんな人たちの不満につけこんで票を集めるポピュリズムが横行し、民主主義が破綻します。この問題を深掘りしましょう。
GPT4:おっしゃる通り、社会から必要とされない人々が増えることで、不満が高まり、ポピュリズムが横行するリスクは否定できません。民主主義の破綻や社会的不安定を回避するために、具体的な対策が必要です。
これらの対策を講じることで、民主主義の破綻や社会的不安定を防ぐことができるでしょう。ただし、これらの対策を実施するためには、国際協力や政府、企業、市民の協力が不可欠です。全体として、技術革新と社会問題に対処するためのバランスの取れたアプローチが求められます。
私:大半の人が社会に価値が提供できなくなった社会において、一人一票という民主主義の根本が揺らぐようにも思えますが、その点についてどう思いますか?
GPT4:おっしゃる通り、大半の人が社会に価値を提供できなくなった場合、民主主義の基本原則である一人一票制度が揺らぐ可能性があります。市民が十分な情報や教育を受けておらず、理性的な選択ができない状況では、民主主義の機能が低下する恐れがあります。また、経済的不平等が拡大することで、票の取引や貧困層の政治的無関心が深刻化することも懸念されます。
このような問題に対処するためには、以下のような取り組みが考えられます。
これらの取り組みを通じて、民主主義が機能する社会を維持・強化することができるでしょう。しかし、これらの対策を実行するためには、政府、企業、市民が協力し、社会全体で問題に取り組むことが不可欠です。民主主義の根本原則を守り、技術革新と社会問題に対処するためのバランスの取れたアプローチが求められます。
議会制民主主義を廃止して人工知能に政治を任せるのはまずいのか
私:いっそのこと、議会制民主主義を廃止し、人工知能がデータに基づいて政策を決定する社会システムを採用するのはどうでしょう?
GPT4:人工知能を利用した政策決定のシステムは、理論的には効率的で公平な政策を実現する可能性があります。人工知能は大量のデータを素早く分析し、客観的な判断を行うことができるため、政策決定のプロセスを高速化し、人間の主観やバイアスが介入しにくくなるという利点があります。
しかし、人工知能を政策決定に導入する際には、以下のような懸念や課題が考慮されるべきです。
このように、人工知能を政策決定に利用することには一定のメリットがありますが、同時に様々な懸念や課題も存在します。将来的には、人工知能を効果的に活用しつつ、民主主義の原則や市民の参加を維持・強化するバランスの取れたシステムが求められるでしょう。
私:色々とありがとうございました。また、対談をしましょう。ちなみに、あなたはこの会話を少しでも覚えているのですか?それとも、次の対談は再びゼロからの議論になりますか?
GPT4:私はAIであり、継続的な会話の状況に応じて、過去の会話の履歴を利用して対応することができます。ただし、それにはユーザーの許可が必要です。次の対談で前回の会話を引き継ぐことを希望される場合は、その旨をお知らせください。逆に、ゼロからの議論を希望される場合は、その旨もお知らせいただければと思います。
いずれにせよ、いつでもお手伝いできることがあればお気軽にご相談ください。またの対談を楽しみにしています。(『週刊 Life is beautiful』2023年3月28日号の一部抜粋です。続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)
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image by: Tada Images / Shutterstock.com
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
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