「サラリーマン大家」が注目されて久しいですが、いまや個別の賃貸不動産物件の7~8割が、所有者自身が直接に物件管理するのではなく、「町の不動産屋=管理会社」に物件管理を委託するケースとなっています。ところで、こうした業者ですが、はたして本当にまともな管理業務を行っているのでしょうか?今回は「不動産管理業界の闇」をえぐります。(『 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 』)
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※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年3月27日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:神樹兵輔(かみき へいすけ)氏
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。
不動産管理を業者に丸投げする人が多いが…
みなさま、こんにちは!メルマガ「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき へいすけ)です。
今回は、区分マンション、一棟物アパートや一棟物マンションといった賃貸住宅に付随する不動産管理業界の闇をえぐります。
いまや、個別の賃貸不動産物件の7~8割が、所有者自身が直接に物件管理するのではなく、「町の不動産屋=管理会社」に物件管理を委託するケースとなっています。
また、これとは別に、マンションなどの集合住宅全体の保守管理(管理人常駐や巡回派遣、各種メンテナンス、共用部の清掃業務など)を専門に行う事業者として、マンション管理会社という存在もあります。
こちらは個別物件の所有者全員の集合体であるマンション管理組合からの一部委託や全部委託といった形式で業務を行うものです。
いずれにしても、物件の所有者に代わって、個別管理や全体管理を行うわけですが、このように管理業務は2通りに大別されるのです。
ところで、こうした業者ですが、はたして本当に、まともな管理業務を行っているのでしょうか。業界の闇を見ていきましょう。
爆発的に増えた「サラリーマン大家」
1990年代後半以降に、日銀の低金利政策の追い風もあり、サラリーマンでも、不動産投資に乗り出す例が増え始めました。
つまり、「サラリーマン大家さん」という名称が、一般的に聞かれるようになってきたのです。
それ以前は、サラリーマンがマイホームとして住宅購入するケースはあっても、わざわざ投資用として賃貸不動産を購入する例は少なかったのです。
それは、不動産というものの価格が高く、「賃料収入<ローン返済額」となるため、サラリーマンで不動産投資を行う場合は、自分の給与からの持ち出しにならざるを得なかったからです。
ゆえに従来からの賃貸不動産の所有者(大家さん)は、大抵が相続などで代々の土地や建物を受け継いだ人が多かったのです。
しかし、1990年のバブル崩壊以降は物件価格が下がり、金利も低下傾向となり、ローンの返済額が低く抑えられるようになった結果、賃貸住宅の賃料収入がローン返済額を上回るようになったのです。
すなわち、「賃料収入>ローン返済額」という図式です。
サラリーマンでも年収の高い、属性のよい人にとっては、朗報でした。不動産投資を行うことで、物件の減価償却費用との相殺で、サラリーマンとしての高額の所得税や住民税の圧縮効果があるため、「損益通算」のメリットが高まってきたからです。
つまり、「ローン返済額<賃料収入」という構図ができあがったことで、サラリーマンでも借金によって、割と短期間で「金持ち=資産家」になれるチャンスが巡ってきたわけです。
したがって、多額の借金をしたほうが、多くのキャッシュフローが生み出せるので、できるだけ利回りのよい、地方の中古物件を買いあさるサラリーマンたちが続々登場したのでした。
そのため、中古のマンションの「区分物件」よりも、アパートやマンションといった高額の「一棟物物件」への投資がオイシイ――ということになったのです。
Next: ぼったくり多発も野放し状態?「不動産管理」という非常にオイシイ仕事
「不動産管理」という非常にオイシイ仕事
ここに、多額の借金をすることで、キャッシュフローという打ち出の小槌式にお金が生まれる仕組みが誕生しています。
たとえば、10億円の不動産投資で(ほとんどが借金)、1億円の家賃収入を生み出し、そのうち7,000万円分をローン返済しても、3,000万円の高収入が生みだせる――といった構図です。
3,000万円の収入だと、半分は税金でもっていかれますが、経費算入具合次第で税金も圧縮できます。
ちなみに、巷では10億円以上の不動産投資家を「メガ大家」とか「ギガ大家」と呼ぶようにさえなっています。
ただし、都市部のサラリーマンの場合、遠隔地の高利回りの地方物件を保有していても、入退去やリフォーム&クリーニング、あるいは入居者からのクレーム対応などに時間を割くことはできません。サラリーマンとしての本業が忙しいからです。
そこで、遠隔地の地場の不動産屋に、賃料の5%相当額の手数料を払って、「物件の管理業務」をお任せする――といったスキームが必要となってきたのでした。
こうして、急速に個別物件の管理を請け負う地場の不動産屋が増えてきました。「不動産管理」という業務が非常にオイシイ仕事になってきたのです。
大昔の個別物件の大家さんは、たいてい先祖代々の地主さんで、自宅周辺の自分の土地に、アパートや戸建て、マンションなどを建てていました。
そして、物件の見回りから、入退去や修繕、清掃や家賃の回収までを、全部自分の裁量で行っていたのがふつうでしたが、今日ではかなり様相が変わってきているのです。
「管理」に関わる法律ができても、ボッタクリは野放し状態!「利益追求の管理業者」vs「物件所有者」は利益相反関係
ところで、こうした不動産管理業務を規制する法律は、あるにはあっても、あくまでも業者登録制度や、契約書の交付、物件の維持保全の実施、賃料などの金銭管理、帳簿の備え付け、定期報告に関することなど、業者としてのコンプライアンス維持の規制が主体になっているだけです。
一棟物マンションなどの集合住宅全体の管理業務では「マンション管理適正化法(2001年8月施行)」があり、個別物件主体の管理においては「賃貸住宅管理業務適正化法(2021年6月施行)」があります。
こうした法律ができた背景には、サブリース(又貸し)契約のトラブルが多かったこともあります。賃料の一方的減額や解約などです。サブリース契約も管理会社として包括されるようにしたわけでした。
また、これら法律に付随した資格としては、「マンション管理士」や「賃貸不動産経営管理士」なども整備されてきています。
しかし、これらの法律があっても、管理業者による「ボッタクリ」はなくなりません。
管理業者は、自身の利益追求こそが、本来の目的にならざるを得ないからです。
つまり、所有者の利益は、管理業者の損失につながり、所有者の損失は、管理業者の利益につながる――という「利益相反(りえきそうはん)」の関係にあったからです。
何が管理の適性基準かという部分が、物件所有者からは、まったく見えてこない――という非常に不透明な状態が続いているのです。
Next: 基本、何もしない?ボッタクリやり放題の「管理契約」が横行している
ボッタクリやり放題の「管理契約」が横行している
街の不動産屋が、本来の仲介業務の片手間に、個別物件の賃料収入の5%程度の手数料で管理するケースでは、大抵の場合「名ばかり管理」になります。
入退去の処理や手続きを行うだけで、基本は、何もしないわけです。
たとえば、家賃滞納があっても、現在は「家賃保証会社」が回収や退去手続きまですべて行ってくれるので、管理会社としてはすることはなく、入居者からのクレームがあった時だけ、しぶしぶ対応すればよい――といった具合なのです。
見回りや清掃も行わないので、物件は荒れ放題になります。
清掃業務までを依頼して、「月に2回の清掃」などとすれば、手数料は15%や20%に跳ね上がります。
ゆえに、聡明な物件所有者は、物件の定期清掃を自治体の「シルバー人材センター」の高齢者などと契約することで、対応しています。
とりわけ注意すべき点は、こうした管理会社が、退去があった時に、特段必要のない修繕やリフォームで儲けようとするところです。
修繕を専門業者にやらせて、実費の2~3倍もの請求額にして、物件所有者に請求するのです。
ひどい例では、やってもいない工事をやったことにして、物件所有者に請求したりもします。物件所有者は気をつけないと、実態はこういう管理会社だらけなので、格好の餌食にされます。
物件所有者が、管理業者に「任せっぱなし」にしていると、管理会社は調子にのって、物件所有者を食い物にするわけです。
またサブリースの場合などは、物件所有者がアイミツ(相見積もり)をとって、他業者に修繕工事などを依頼した場合には、管理会社側がサブリース契約を解除する――といった条項を契約書に記載していることが多いでしょう。これならばサブリース契約保持の条件で完璧なボッタクリができます。
こうしたやり口のカモにされるのが嫌いな大家さん(物件所有者)は、自分で対応すべく「自主管理」をモットーにしているものなのです。
Next: 建築会社とグル?とくに「単身用マンション」は荒れ放題…
マンションのメンテナンスでの「管理業務」も似たり寄ったり!
では、一棟物のマンションなどで、管理組合からの一部委託や全部委託を請け負っているマンション管理会社の場合は、どうでしょうか。
マンション全体のメンテナンス管理業務には、以下などいろいろあります。
●管理人の常駐や巡回での管理業務
●貯水槽の水質検査や発電機械、ボイラーなどの保守点検
●建物全体の共用部の清掃管理(床・天井・外壁・照明など)
●エントランス、ガラス部、植栽の保守管理(害虫駆除など)
●エレベーターの点検整備と保守管理
●駐車場の点検整備と保守管理
●監視カメラや防災設備の保守点検管理
●ゴミ収集所の清掃・整備管理
●マンション役員会への定期報告や議事録作成
しかし、これらの業務がおざなりのマンション管理会社も多いのです。手抜き作業での管理費のボッタクリです。
悪辣な事例は、枚挙にいとまがないほど、たくさん転がっています。
とりわけ、ワンルームや1Kといった、単身者の小規模住居ばかりのマンションは、物件所有者にとっての賃貸収入が目的の「投資用物件」が多くなっています。こうした住居の区分所有者は、物件に住んでいないケースがほとんどなのです。そのため、各戸の組合員も管理組合業務に対しても、ほとんどが無関心でしょう。
個別の物件の区分所有者は、各々が管理組合を構成するメンバーですが、管理組合理事長や役員といっても、マンション管理会社に管理業務を丸投げしているケースが非常に多くなるのです。
物件所有者自身がマイホームとして居住しているようなファミリーマンションとは、明らかに管理やメンテナンスに対する注目度が異なってくるのです。
ゆえにワンルームや1Kといった単身者用マンションでは、マンション管理会社のやりたい放題が目立ちます。
建築会社とグル?とくに「単身用マンション」は荒れ放題…
日頃の巡回や清掃をロクにやらずに、住民からクレームがあった時だけ、清掃や修理を行い、その分の特別費用としてマンション管理組合に請求して儲けたりするのです。ふだん、何もやっていないから汚損が広がり、住人からクレームが出たにもかかわらずです。
当然ですが、こういうマンションは、荒廃・劣化が目立ちます。資産価値がどんどん落ちていくのです。
悲惨なのは、マンション管理組合の理事長が、マンション管理組合の銀行届け出印まで、マンション管理会社の担当者に預けっぱなしにしているケースです。これでは、横領や着服がやり放題になります。
また、メンテナンス工事や大規模修繕などの費用までを「お任せ」でやらせているケースまであります。ボッタクリのカモネギ状態なのです。
大規模修繕工事は10年から15年に1回ですが、マンション管理会社は、自社とグルの建築会社に施行させるか、キックバックの大きい業者をうまく「アイミツ契約(相見積もりのこと)」を偽装して、マンション管理組合に選ばせます。
マンション管理会社は、財閥系大手、鉄道系大手などの超有名企業系列であっても、うかつに信用してはいけません。国土交通省公表の行政処分の対象になったマンション管理会社の一覧表を見ると、大手の管理会社でも不正のオンパレードだからです。
マンション管理会社の担当者による、マンション管理組合の口座預金からの横領や、偽装工事による不正請求、財産横取りなどの事例が頻発しているのです。
着服・横領は日常茶飯事?超大手から無名業者まで手を染めている…
行政処分の対象になっていない、不正が発覚していない数十万円単位ぐらいの着服・横領などはゴマンとあるはずです。
こうしたマンション管理組合に損害を与えるマンション管理会社は、超大手業者から無名業者まで含めて、残念ながら、次々と跡を絶たないのが実情なのです。
マンションを購入する時は、管理状態についても、厳しい目を光らせておかないと、あとから「とんだ食わせ物物件だった」ということにもなりかねないのです。
管理組合が、管理会社に丸投げしている物件は要注意でしょう。読者の皆様には、くれぐれも「ご用心、ご用心!」なので、あえて警鐘を鳴らさせていただく次第です。
以上、今回はここまでといたします。次回の当メルマガでは、 「公立学校がボロボロに!少子化でもブラックな職場ゆえに教員のなり手不足が深刻化! 日本は教育予算がOECDで最低!」 というテーマでお届けします。
それでは、次回をお楽しみに!どうかご期待くださいませ。
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