昨今テレビCMや街角でもよく見かけるようになった、保険の無料相談。しかしよくよく考えてみると、すべてが無料であるならば商売としては成り立つはずもありません。そこにはどのようなカラクリがあるのでしょうか。今回そんな疑問に答えてくださるのは、ファイナンシャルプランナーで『老後資金は貯めるな!』などの著書でも知られ、NEO企画代表として数々のベストセラーを手掛ける長尾義弘さん。長尾さんは記事中で無料相談ビジネスの「真実」を暴露するとともに、安心して相談できる、信頼に足る窓口を紹介しています。
プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)氏
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
生命保険の無料相談や、金融機関からの投資アドバイスというのは、公平中立なアドバイスなのか?ということを考えてみたことはありますか?
じつは、無料で相談できるって、「そもそも信用しない方がいい」という話をしたいと思います。
また、こんな話を書くと、さまざまな方面からお叱り、批判が出そうなのですが……。
そもそも、無料で相談ができるなんて不思議だと思いませんか?その人はボランティア活動をしているのでしょうか?
もし、ビジネス(仕事)で行っているのでしたら、誰からお金を得るのでしょうか?
相談者は、お金を支払っていないのでクライアントにはならないですよね??
そんな話をしてみましょう。
保険の無料相談というのは、とても便利な駅前にあったり、ショッピングセンターの中にあったり、とても立地のいい場所にショップを構えていますね。ネットでも保険の無料相談というのは当たり前で、なんと相談を申し込むだけで、高級和牛やお米のプレゼントがあるってビックリです。
それに保険の相談は、とても親身に聞いてくれて、時間をかけて説明をしてくれます。なんて親切なのでしょうか?
でも、本当にそうなのでしょうか?
そうです。保険の無料相談というのは、ボランティアではありません。
保険を販売して、その手数料が自分の給与に反映されるのです。ということは、保険会社からお金を得るわけです。ですから、「相談員」と言うよりも保険の「販売員」といった方がいいのでは?と思ってしまいますね。
相談者は、自分にあう保険をできだけ安く入りたいと思います。代理店側(販売側)は、契約金額が大きく、手数料の多い(利幅が大きい)保険を売りたいです。
これは一方の利益になりますが、もう一方は不利益になります。つまり「利益相反」ということです。
さらに、相談者側は、よくわからないから相談をするわけですが、販売側は、保険の情報をたくさん持っています。すると販売側は、売りたい商品について、説明をいろいろしてくれますが、不利な情報というのは相談者に伝えないということがあります。これを「情報の非対称性」といいます。
たとえば、売りたい商品よりも、扱っていない他の商品の方が保険料は安く、保障内容がよいとしても、そういった情報は、相談者に伝えません。
さて、金融庁が2021年に、保険会社向けの監督指針を改正しました。その中で公的保険の適切な説明をするよう保険会社に指示をしています。
これは「保険を販売するときには、公的医療保険や遺族年金などの公的な保障もあることを説明しなさい」ということです。これも「情報の非対称性」にあたります。販売側にとって不利な情報も出すようにということです。そうしないと相談者が損をすることにつながるからです。
保険の例を出しましたが、他の金融商品でも同じです。
つぎに、銀行の窓口を例にとりましょう。
銀行で取り扱っている投資信託の商品は、どれも販売手数料が高く、信託報酬が高いものばかりです。それは銀行にとって、手数料が多く入ってきますので「よい商品」になります。
しかし、相談者(顧客)にとっての「よい商品」とは、販売手数料が低くて、信託報酬が安い商品です。
これも「利益相反」の関係です。もちろん、銀行の窓口では、ネット証券などで扱っている投資信託の方が、手数料が安くて信託報酬も安いなんて教えてくれません。
ここにも「情報の非対称性」が存在します。
銀行の窓口で相談をすると「損」するということですね。
では、有料相談ならば安心ができるのか?ということになりますが、これもちょっと微妙です。
たとえ有料相談であっても、保険を販売していたり、金融商品の販売をしている場合は注意が必要です。
たしかに、クライアントは相談者になり、相談者に寄り添った形でもアドバイスを受けることができるのですが、販売をしているということは、販売手数料も受け取っているのです。つまりクライアントは両方になるということです。ですので、100%公平中立とは言えません。
それだと「利益相反」が、残っていると言うことになります。
本当に公平中立なアドバイスは、有料の相談で、かつ商品の販売していない人になります。じつは、とても数が少ないのですが、相談のフィーだけで仕事をしている人は存在します。
筆者の知り合いにも何人かいますし、一部のFPでもそういった活動をしています。たとえば「みんなのお金アドバイザー協会」や「FP技能士会」などは、商品販売に頼らず相談料を中心として、中立公平なアドバイスを指針に掲げているところです。
残念ながら今のところ希少ですが、もっと増えていくことを期待しています。
最後に、ネットの記事も公平中立かいうと、ちょっと疑問です。
ネットの中で保険商品ランキングなどがありますが、これってどういうランキングなの?もしかしたら「売りたいランキング?」って筆者は疑問に感じてしまうことがあります。なぜかというとこのランキングというのは、商品の問い合わせランキングだったりします。つまり、そのサイトで扱っている商品しかランキングに入っていないということです。全部の商品を比較しているわけではありません。
また、広告が入っているムックで保険商品ランキングもあります。しかし、広告が入っているということは、忖度が働くので公平中立ではありませんよね。
こんなことを書くとマズイのですが、私のような記事を書いていると、サイト(有名でアクセス数の多いサイト)から保険記事はやめてくださいというオーダーもあったりします(ナイショですが)。なぜかというと、そのサイトには、保険会社の広告が入っているからです。
また過去に、「保険の無料相談について注意」の項目をばっさりと削除されたこともあります。
もし、この部分の記事を読んでいれば、このサイトでは削除されなかったと言うことですね(汗)。
公平中立なアドバイスをしてくれる人を見つけるのは、なかなか困難な作業かも知れません。でも、探せばいます。相談する場合は有料になりますが、できればそういう人の方が安心だと思いませんか?「タダより高いものはない」なんていうことわざもあります。相談とかは無料が当たり前のように思っているかも知れませんが、無料というのは却って損をすることにもなりかねません。
プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)氏
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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尾 義弘氏
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