※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2022年5月21日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
ここ数週間、山口県阿武町に住む若者が町から誤送金された給付金4,630万円をどこに使ってしまったのか、あるいは隠し持っているのかの話題で持ち切りでした。
テレビのワイドショーも執拗に追いかけ、卒業文集の「地球最後の日に何がしたいか」という問いに「持ち金をつかいはたす」と答えたことや、“お薬”をやっていて元から様子がおかしいなどなど…。
犯人が特定されていて実名でわかっているのだから、それ以上は騒いでも仕方ないであろう話に、メディアが血道をあげる展開となってしまいました。
しかし、ネット上では、今回のメディアの報道姿勢に疑問を持つ声も多く聞かれます。
それは、4,630万円の650年分の金額に及ぶ新型コロナ対策の補正予算の「予備費」12兆円のうち、90%にあたる「11兆円が何に使われたかわからない」という、日経新聞の報道内容のほうが断然大問題だということ。
すでに1か月経過してもメディアは後追い報道を行わず、政権もなんの説明もしていないことこそ追いかけるべきであると、強烈な不満が溢れ始めています。
これは自民党政権にとかく提燈記事を書くことで知られた日経新聞が、日経電子版で4月22日に独自分析のスクープ報道として掲載されたもの。
※参考:コロナ予備費12兆円、使途9割追えず 透明性課題 – 日本経済新聞(4月22日付)
新型コロナ対応として時の政権が補正予算を国会で通過させたものの、その中の予備費12兆円について、日経新聞が独自分析した結果、実に9割以上は具体的に何にどう使われたのかまったくわからないとのことです。
日経の独自分析で、国会提出資料や省庁への取材から用途を正確に特定できたのは3つの政策項目だけで、全体の6.5%の8,000億円強にとどまったという驚愕の内容でした。
あの政権御用新聞と揶揄されることもある日経が、よくぞここまでコロナ政策の問題に切り込んだものだと改めて評価したい分析内容です。
この日経の記事によれば、12兆円強の主な振り分けは医療・検疫体制確保向けの4兆円。地方創生臨時交付金として、地方に配られたのが3.8兆円となっているようです。
しかし、自治体が配布された予備費をどう使ったのかはまったく把握できず、公用車の買い替えに利用したなどという、理不尽な使途も浮かび上がる始末です。
岸田政権は、2022年度予算のコロナ予備費5兆円を、ガソリン高などの物価対策充当する方針だそうです。
しかし、本来特定の政策を目的にした予算の執行にあたっては、歳出を細かく積み上げて予算案を作り、国会審議を経て出費するプロセスが必須になります。
それにも関らず、パンデミックだから緊急時に即座に利用できる予算を予め計上しておくことが必要との大義名分で設定されたはずの予備費が、政権の閣議決定だけで利用できる都合のいい魔法のお財布と化している点は大問題です。
コロナ給付金の誤入金を使い込んだ山口のあんちゃんを調べ上げるよりも、はるかに深刻な問題になっています。
四半期GDPを見る限り「コロナ補正予算」に経済効果は見られない
11兆円と一口に言いますが、本邦の年間GDPの2%に相当する金額です。
それを「なんだかわからないうちに適当に配ってなくなりましたとさ」では、さすがに済まない状況です。
5月18日に発表された2022年1-3月期の実質国内総生産・GDPの一次速報値は、前期比マイナス0.2%(前期比年率ベースではマイナス1.0%)と、2四半期ぶりのマイナス成長となっています。
他の主要国がオミクロン株の感染拡大が起きても、すてに成長を回復させているなかにあって、日本だけが依然マイナスを維持していることがわかっています。GDPの年率換算マイナス1%は、市場の事前予測1.8%より小さかったとされていますが。
11兆円があれば、国民全員に10万円を再給付できた
11兆円の予備費があれば、乳幼児を除くすべての国民1.1億人に10万円を再給付できました。
政権が適当な自由裁量でカネをバラまき使い切るより、よほど経済の落ち込みを補填する資金として有効利用できたかもしれません。
そのことを考えれば、ネット民が声を上げて、この政権の暴挙を批判するのはひどく当たり前の話に見えます。
このコロナ対策補正予算の予備費については安倍元首相、菅前首相、岸田現首相の御三方が雁首を揃えて国会で正式に説明する必要がある事案です。
夏の参議院選挙前に詳らかにするところで、国民に信を問う必要があると思われます。それでも国内メディアは、まだ完全無視するつもりでしょうか。
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