新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初期症状の1つに「嗅覚障害」が報告されています。COVID-19から回復しても、人によっては失った嗅覚を取り戻すのに非常に長い時間がかかるといわれています。そんなCOVID-19由来の嗅覚障害にはアロマによるリハビリが有効であるという報告があがっています。
Systemic corticosteroids in coronavirus disease 2019 (COVID‐19)‐related smell dysfunction: an international view - Huart - - International Forum of Allergy & Rhinology - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/alr.22788
Doctors Identify The Best Treatment For COVID-19 Smell Loss, And It's Not Steroids
https://www.sciencealert.com/experts-recommend-a-simple-way-to-recover-your-sense-of-smell-after-covid-19
報告したのはベルギー・イギリス・トルコ・デンマーク・カナダ・スイスなど複数国の医師で構成された研究チームです。研究チームは「嗅覚の喪失によって引き起こされる精神的あるいは肉体的負担を経験する患者の割合が高いため、嗅覚障害の治療に対して前例のない需要が生まれています」と述べています。
嗅覚や味覚の消失は、新型コロナウイルスの感染を高確率で予測できる症状だといわれています。COVID-19によって嗅覚が消失するメカニズムは記事作成時点でも不明ですが、一説には「神経周辺にある嗅細胞の支持細胞などへの障害によって、嗅神経の機能が阻害されている可能性」が指摘されています。
「味覚・嗅覚の消失」は新型コロナウイルスの感染を高確率で予測すると1万8000人のデータから示される - GIGAZINE
COVID由来の嗅覚障害には、コルチコステロイド(副腎皮質ホルモン)剤が処方されることがあります。しかし、研究チームは「コルチコステロイドの有用性を裏付けるエビデンスが弱い」「嗅覚障害の自然快復率が遅い」「コルチコステロイドは副作用が比較的強い」という理由で、コルチコステロイドの処方には注意が必要だと指摘しました。
この嗅覚障害の治療として、研究チームはアロマを使った嗅覚のリハビリテーションを行うことを推奨しています。
2021年1月に発表された、嗅覚障害を訴えるCOVID-19患者1363人を対象にした研究では、アロマを1日2回嗅ぐ嗅覚のリハビリテーションを行った患者の95%が半年後に嗅覚を取り戻したことが報告されています。なお、使われたアロマはクローブ・ローズ・レモン・ユーカリの少なくとも4種類でした。
リハビリテーションは場合によっては数カ月行う必要があるそうですが、副作用なしに嗅覚障害から回復することが期待できるとのこと。研究チームは、「香水・レモンの皮・バニラ・コーヒーなど、なじみのある匂いに焦点を合わせ、それらを嗅ぎながら思い出を振り返るのがいい」「最良の結果を得るには12週間ごとに匂いを変える必要がある」と報告しています。
研究チームの1人でイギリスのイーストアングリア大学のカール・フィルポット氏は「嗅覚のリハビリテーションは、COVID-19を含む嗅覚障害に対する、安価でシンプルで副作用のない治療法として期待できます。嗅覚のリハビリテーションは神経可塑性に基づく回復、すなわち変化やケガを補うために自己修復する脳の能力を補助することを目的としています」と語りました。
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