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遥か昔から、人類は必ず死が訪れることを知っていた。だがそれに抗おうと、いつの時代でも不死の探究は続けられている。
その一方で、実際に不老不死を手に入れたという伝説を持つ者も存在する。そのひとりが15世紀生きていたニコラ・フラメルという男だ。彼は
賢者の石の製造に成功したばかりでなく、古代の魔術と錬金術を使って永遠の命の秘密を見つけたと言われている。
今回はそんなニコラ・フラメルの奇妙な不死物語を紐解いていこう。
死んでから400年後に注目を集めたニコラ・フラメル
ニコラ・フラメルは1330年生まれの出版業者で、パリで本屋を2軒つつましく経営し、1368年にペレネレという女性と結婚した。
ここまでは、なんの変哲もない話のように思え、彼の生涯はとくに語るようなものはない。ところが、フラメルの死後、彼に関する奇妙な噂がささやかれ始め、無数の謎を秘めた人物として、想定外の脚光を浴びることになった。
1418年にフラメルが死んでから約400年たった17世紀、彼の謎に満ちた人生が噂になり始め、つつましい出版業者以外の別の顔が注目されるようになった。
1冊の本との奇妙な出会い
本当の彼は、神秘的な錬金術の秘術に深く傾倒していたというのだ。それはある夢から始まった執着だったという。
ある夜、天使がやってきて一冊の本を彼に見せ、"この本をよく読むのだ、ニコラ。最初はさっぱりわからないだろうが、いつか、ほかの誰にも見えないことが見えるようになるだろう"と言われたという。
それはあまりにも鮮明な夢だった。夢の中で、ニコラはその本に触れようと手を伸ばしたが、触れる前に目が覚めた。
それからというもの、この現実離れした夢が彼の心にひっかかっていたが、ある謎めいた人物が彼の本屋を訪ねてきたことによって、それが強烈によみがえってきた。
その男は一冊の本を抱えていて、これを売りたいという。フラメルの商売にしてみたら、特におかしなことではないが、奇妙だったのは、その本が夢の中で天使が持っていた本と同じだったことだ。
フラメルはすぐにその本を買い上げ、書斎に持ち込んで読み始めた。表紙はいかにも時代がかっていて、銅で細工された不可解なシンボルやデザインが装飾されていた。冒頭には、"ユダヤのアブラハム、王子、聖職者、レビ人、占星術師、哲学者"が記したと書かれていた。
そして、この本を読む資格のない者には呪いがかかると繰り返し警告してあった。続くページには暗号めいた文章や、デザイン、挿絵、図、シンボルなどがちりばめられていて、ギリシャ語や古代ヘブライ語、フラメルがこれまで見たこともない理解できない言語で書かれていた。
錬金術に関する本だと気づくくらいの知識はあり、ページの中には深い秘密が隠されていることは想像がついたが、当時はまったくわからなかった。ここから、フラメルはこの本の解読にのめり込むようになった。

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賢人との出会い
フラメルは時間の許す限り、手がかりを求めてパリを歩き回り、ときに書斎に閉じこもって、最終的にこの本の内容を理解するに至ったとされている。
21年かけてゆっくりと書物の内容をひもといていったが、まだわからないところがあった。そこで、フラメルは、当時、多くのユダヤ人亡命者が住んでいたスペインまで旅して、さらに答えを突き
詰めようとした。
その旅の途中で、フラメルはユダヤ人学者で賢人のカンシュと出会った。カンシュは例の本を、カバラの神秘を研究した偉大な師のひとりである「
術師アブラメリンの聖なる魔術の書」の写しだと見た。
この書物は大昔に失われたとされていたが、その秘密は解読を運命づけられた者のところに、自らやってくると言われていた。
カンシュはフラメルが持っていたこの本の数ページを訳し、残りを訳す手助けをするためにパリへ戻ることに同意した。残念なことに、翻訳の完成を見ないうちにカンシュは亡くなったが、フラメルは解読を続ける十分な能力をすでに会得していた。

フラメルがパリ市内のサン・ジノサン墓地に寄進した錬金術の寓意図
本の解読が終わり、賢者の石を生み出す
フラメルは、それから3年かけて翻訳作業を終わらせ、その途中で膨大な魔力の秘密を解き明かしたという。
伝説の賢者の石を生み出す秘儀を学んだこともそのひとつだ。これは、水銀などのなんの変哲もない金属を黄金に変えるような、錬金術師たちが長いこと喉から手が出るほど欲しがっていた能力の鍵になるものだ。
面白いことに、この時期、フラメルは急に懐具合が良くなったようで、これは錬金術を使ったせいではないかと言われている。
フラメルと妻は、莫大な金を教会や慈善事業につぎ込んだが、どこからそんな金が入るのか誰にもわからなかった。フランス王シャルル六世は、フラメルを調査するよう命令したが、怪しい取引の痕跡などはなく、彼の富の出どころについてはなにもわからなかった。

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死後、ニコラ・フラメルは伝説に
公式の記録では、フラメルは1418年に88歳で死んだということになっている。その後、彼の家は荒らされ、そのときに、賢者の石や「術師アブラメリンの聖なる魔術の書」は盗まれてしまったらしく、行方がわからなくなってしまった。
17世紀始めに、フラメルの子孫だというデュボアという男が、自分はフラメルの秘儀を受け継いだので、鉛から金を作り出すことができると主張した。
時の枢機卿リシュリューがこれを聞きつけ、デュボアから秘儀を聞き出そうと彼を監禁してまでして本を盗んだが、理解することはできなかったようだ。
その後、時の流れと共に本は行方知れずになった。17世紀には、ニコラ・フラメルの錬金術の技を語るさまざまな書物が急に出回るようになり、彼が書いたとされるものも登場した。
そのため、フラメルは伝説になり、当時の錬金術ブームを大いに後押しした。あのアイザック・ニュートンの日誌にさえ、"使者の杖、フラメルのドラゴン"と書かれている。
The Story of Nicolas Flamel (The Immortal Philosopher) - Harry Potter Explained フラメルに不老不死の噂が流れる
そのうち、フラメルは錬金術の秘儀だけでなく、不老不死の秘密もつかんだという噂が流れ始めた。
フラメルは15世紀に死んだということになっているのに、どうやら彼は生きているらしいという話が出てきた。
死んだはずのフラメルの姿を17世紀に目撃した、といった話が噂され始めた。
トルコのブルセにいた、ポール・ルーカスという考古学者が、ルイ14世から事実を確認するよう命じられた。
ルーカスは、ある賢人と知り合いになり、フラメルとその妻は賢者の石を使って、不老不死の秘儀を取得したと聞かされた。
この人物によると、賢者の石の秘儀があれば、何千年も生きることができ、フラメルを含め、これを体得できた者は確かに存在するという。
フラメルとその妻は不老不死を達成し、死を偽装してインドへ渡り、そこで生きているというのだ。ルーカスは、最初は信じなかったが、賢人がアブラハムの書いた書のことと、フラメルがそれを手に入れたいきさつを語るのを聞いて、信じるようになった。
実際にはフラメルが本当に死を克服したのかは、誰にもわからないが...
La Historia de Nicolas Flamel 様々なフィクション作品に影響を与えたフラメルの錬金術
フラメルは、のちの時代における錬金術世界になくてはならない存在となった。さまざまな小説やポップカルチャーにも彼の名が登場する。
もっとも顕著な例は、あのベストーセラー『ハリー・ポッターと賢者の石』や、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』だろう。
もちろん、フラメルの死後、何世紀もたってからこうした本が出版されるまでは、彼が錬金術師だったことはあまり知られていなかったことを考えると、フラメルの逸話は、本を売るために実在の人物を脚色した神話にすぎない、フラメルが書いた原稿として誰かがでっちあげた完全な偽造だ、という議論もある。
どこまでが神話で、どこまでが事実なのか、実際にどれだけの事実に基づいているのかという疑問が残る。
ニコラ・フラメルは、確かに実在の人物だが、本当に宇宙の秘儀や永遠の命の秘密を解き明かした錬金術師だったのだろうか? それとも、こうした話はすべて言い伝えや伝説にすぎないのか?彼は多くの神話にまみれた実在の人物なだけなのか、それとも現在でも本当に生きているのか?
明確な答えは出ないが、ニコラ・フラメルは確かにいろいろな意味で歴史に足跡を残したことは間違いない。
References:The Strange Tale of the Immortal Nicholas Flamel | Mysterious Universe/ written by konohazuku / edited by parumo あわせて読みたい
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