貼り付け開始、
http://karapaia.com/archives/52294097.html
悲鳴を上げ仲間に危険を知らせる大腸菌/iStock
目の前に危険が迫っている。自分はもうだめだけど仲間は助けたい。そう感じるのは、人間、動物、植物のみならず細菌も同様のようだ。
細菌の中には、死際に断末魔の叫びをあげ、群れの仲間に危険を知らせる種がいるのだそうだ。それは進化をうながし、薬剤耐性を獲得させることすらあるという。
細菌の断末魔の叫び――ネクロシグナル
叫びといっても、私たちの耳に聞こえるわけではない。それは化学物質を使った警報で、「ネクロシグナル」とも呼ばれる。
多くの細菌は、「鞭毛」という尻尾のようなものを使って泳ぐことができる。だが大腸菌のような細菌ともなると、数十億もの大群を作り、鞭毛を使って硬い表面を移動することすらできる。その姿はもはや1つの個体のようだ。
だからこそ、細菌の群れは、個々の細菌とはまた違うメカニズムで抗生剤への耐性を進化させるのではないか? とテキサス大学の研究グループは考えた。

iStock
死にゆく大腸菌は仲間に危険を知らせていた
同研究グループによるこれまでの観察から、抗生剤を投与された大腸菌の群れは、25%が死ぬことが分かっていた。
だが不思議だったのは、死んだ大腸菌が何らかの手段で仲間に危険を知らせているように見えたことだ。抗生剤によって群れの一部が死に始めると、なぜかそこから脱出する仲間が観察されたからだ。
大腸菌の群れは一体どのようにして危険を仲間に知らせているのか? それが今回調査されたことだ。

何十億もの群れで動く大腸菌 image by:University of Texas at Austin
死際の叫び声で体内ポンプが発動。さらに進化まで
そして明らかになったのは、大腸菌が死ぬときに「AcrA」というタンパク質成分を放出し、これが生きている大腸菌の外膜にくっつくと、脱出が始まるということだ。
だが、この化学的断末魔の叫びは、ただ危険を知らせるだけの警報ではない。生きている細菌の膜に備わっているポンプ機能のスイッチを入れ、侵入してきた抗生剤を排出させるのだ。
またネクロシグナルは将来へ向けての行動でもある。これによっていくつもの遺伝子にスイッチが入り、彼らにとって有害な物質への耐性まで獲得させるからだ。

大腸菌(緑)の外膜に結合したAcrAタンパク質(赤)image by: (c) University of Texas at Austin
あえて弱点を作ることで生存率を高める戦略
興味深いのは、群れをさらに小さな小集団に分けて観察してみると、それぞれの小集団は遺伝的にバラついており、中には抗生剤に特に弱い小集団がいたことだ。
研究グループによると、細菌の群れはあえて弱い小集団を作り出し、これを生存戦略としている可能性があるとのこと。
万が一、抗生剤によって弱い小集団が殺されてしまったとしても、ネクロシグナルのおかげで他の仲間は助かることができる。一部を犠牲にして全体が助かるという戦略だ。
薬剤耐性獲得の巧妙な手口
この発見からうかがえるのは、たくさん細菌が集まっているところへ中途半端な抗生剤を投与してしまえば、かえって薬剤耐性を獲得させてしまう恐れがあるということだ。
こうしたネクロシグナルは、大腸菌以外のグラム陰性菌やグラム陽性菌にも備わっているとのこと。
薬剤耐性を持つ細菌の出現は、医療への大きな脅威となっているが、その背景には、このような細菌の巧妙な仕掛けが存在していたようだ。
この研究は『Nature Communications』(8月19日付)に掲載された。
Fig. 4: AcrA binds TolC externally as a necrosignal. | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-020-17709-0/figures/4
References:futurism/ written by hiroching / edited by parumo あわせて読みたい
トマトが発する電気信号を数学モデルで分析。菌を媒介して仲間に合図を送っていた(米研究)
大腸菌にマジックマッシュルームのDNAを組み込み、幻覚性大腸菌を作り出すことに成功。うつ病の治療に期待(米研究)
大腸菌が描いたモナリザ。そしてアインシュタインの顔からダーウィンの顔に変化(イタリア研究)
「さつまいも」は食べられそうになるとニオイで仲間に危険を知らせる(ドイツ・台湾共同研究)
植物はストレスを感じると超音波の悲鳴を上げている(イスラエル研究)
貼り付け終わり、
- 関連記事
-