中国の習近平国家主席が政権に不満を抱いている勢力に対する排除を行っています。米中対立が加速している中、党と軍に吹き荒れる激しい粛清の嵐。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、激しい党内闘争は習近平政権の行く末を危うくしていると分析しています。その他、秋元司議員逮捕で揺れるIR計画、未だオンラインのみの大学授業、次期米大統領候補のバイデン氏の話題も。
◆1面トップの見出しから……。
《朝日》…秋元議員を逮捕
《読売》…秋元衆院議員 逮捕
《毎日》…秋元議員を逮捕
《東京》…藤井2冠
◆解説面の見出しから……。
《朝日》…英語民間試験 コロナで混乱
《読売》…IR計画 暗礁
《毎日》…クラスターすぐ全検査
《東京》…王位戦 4局のドラマ
*きょうのテーマは「危うきものたち」です。立憲民主党と国民民主党が合流する「合流新党」は十分「危うきもの」ですが、きょうに関しては“次点”ということで(笑)。
■危うき習近平体制■《朝日》
■カジノ計画の蹉跌■《読売》
■危うし!知の未来■《毎日》
■バイデンという選択肢■《東京》
【朝日】の記事に見える「危うきもの」は中国の習近平体制。9面国際面に気になる記事。見出しから。
中国公安部 また粛清
今年3人目 政権不満勢力を排除か
習氏の求心力に影?
中国で、公安当局の幹部が相次いで粛清されている。反腐敗キャンペーン中で失脚させられた周永康氏(元政治局常務委員。無期懲役)の影響力が残っていて、次々に排除されている形。
今、取り調べを受けている上海市副市長兼公安局長で3人目。3人には、周永康氏の部下の部下という共通点。
朝日が取材した党関係者によれば、摘発は「今なお周氏を支持し、現政権に不満を抱く勢力がいるため」で、今年4月にも公安省内では「組織から徹底して周永康の毒を取り除け」と発破が掛けられたという。
習近平体制は、周永康に対する独裁という意味合いもあるのだろう。共産党内部の激しい党内闘争の一端を見せられているように感じる。
周永康氏の汚職が「冤罪」ということはなさそうだが、逆に言うと「汚職」だけなら、周永康氏が摘発されたあとも信奉者が残っているのは理解しにくい。どっちもどっちの「勢力争い」という印象が拭えない。
このようなガタガタした状態が続けば、22年の次期党大会で習氏がトップの座に留まれるかどうかが焦点だという《朝日》の分析は非常に興味深い。
「深まる米中対立に加え、深刻さを増す香港情勢、インドなど周辺国との摩擦など難問が山積。新型コロナウイルスで落ち込んだ経済を回復軌道に戻す手腕も問われる」という。
最も重要なのは「経済」に違いない。そのためには米中対立をどう軟着陸させるのかも重要。その点では米国大統領が誰になるかという要素も大きいはずだ。
【読売】の誌面に見える「危うきもの」はIR。3面の解説記事「スキャナー」の見出しから。
IR計画 暗礁
コロナ禍 優先順位低下
汚職事件 イメージ失墜
訪日6000万人 目標難しく
依存症、治安──根強い懸念も
IRを含む統合型リゾート整備計画が立ち往生しているという。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、IRの認定基準に関する基本方針決定時期の見通しも立たず、開業はその分遅れるだろうという。
そもそも昨年12月に秋元司議員が収賄容疑で逮捕されたことでIRのイメージが悪化し、そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。経済が落ち込む中、すぐにIR整備計画を進められる状況ではなくなったと。
加えて、既存のカジノ自体、「3密」の施設とみられ、マカオでは41施設のすべてで営業を15日間停止した。多くは再開したが、客足は戻っていないという。ラスベガスでも客は半減したと。
IRの「躓き」は、秋元議員の収賄容疑での逮捕、コロナ禍、では終わらない。秋元議員の別容疑での再逮捕がさらに追い打ちをかけているというのが、きょうの時点。
記事は「証人買収」での2度目の逮捕を書き込んでいないが、もうほとんど「マフィアの世界か」と言われかねない「証人買収」などという容疑の登場は、ある意味、IRに相応しい出来事とも思える。
皮肉っぽく言えば、「いよいよカジノらしくなってきたねえ!」ということ。
それにしても、ずいぶんなものを経済政策の決め手にしたものだ。コロナ後には「新しい生活」が必要だなんて言っているのだから、IRはすべて取りやめるべきだろう。そんなことでコロナ後の経済が活性化するはずもなければ、活性化させてよいわけもないだろう。
《読売》はIR推進派だったはずだが、今になって依存症やら治安の問題を指摘する厚顔無恥。
【毎日】が示す「危うきもの」は「大学教育」。1面の定番コラム「余録」に見えている。
英詩人が「この地上に大学より美しいところはない」という大学。ここで言われている「美しさ」は建物や芝生の美しさではなく、「無知を憎む人が知る努力をし、真実を知る人がそれを伝えようと力を尽くしている場所」であるがゆえの美しさのこと。これはケネディー米大統領がアメリカン大学で行った演説の前置き。
今キャンパスはコロナ禍で閉ざされ、学生はオンライン授業を受ける。秋学期も原則オンラインとする方針が大学からは相次いで示され、学生からは不満や不安の声が上がっている。
施設が使えないのに高い授業料を払わされ、議論を交わす相手もない。立命館大学新聞が調査したところ、「退学を視野に入れて今後を考える」学生が1割近いという。
余録子はウィズコロナ時代の大学キャンパスの新しいかたちを探らないことには、この国の知の未来が危うい」という。
教授や学生同士の人間的な触れ合いの中で行われるべき大学教育。オンライン授業一辺倒への不満が募っているのは間違いない。
しかし退学したからといって、海外留学できる訳でもなく、行き場はない。何をすれば人間的な成長にとって有意義な時間を過ごすことができるのか、考えなければならない。
試みに自らの大学生活を振り返ると、過剰なまでに試され続けた毎日が蘇ってくる。気の毒な現代の大学生。
【東京】が伝える「危うきもの」は、米大統領選民主党候補のバイデン氏。4面記事の見出しから。
経験自負も「誤った開戦」
一貫性欠く外交
トランプよりはマシだろうという“期待”だけでは、熱狂を求める米大統領選を勝ち抜くことは不可能だろうとの観測が強まる中、さらにバイデン前副大統領の弱みが指摘されている。
オバマ政権で国防長官だったロバート・ゲイツによれば、バイデンは「過去40年、ほぼ全ての主要な外交、国家安全保障問題で間違っていた」と切り捨てられている。
上院議員時代、国連決議に基づいていた91年の湾岸戦争に反対し、2002年、後にオバマが「誤った戦争」と批判したイラク戦争に賛成している。副大統領時代の2011年、イラク撤退は後にテロ組織の台頭を許すことにつながり、アフガニスタンへの増派に反対した。
外交専門家に言わせると、「軍事力をいつどのように使うかという一貫した哲学に欠けている」(米企業公共政策研究所のコリ・シェイク氏)とボロカス。
比較的同情的な見方をする専門家からも、「対中国を含め自身は強い信念を持っていない。そのため、政策は周囲の助言に左右される」(プリンストン大学教授・アーロン・フリードバーグ氏)と言われてしまっている。
前門のトランプ、後門のバイデン…。
バイデンは、上院議員時代、イラク戦争開戦に賛成したのは誤りだったと認めたそうだ。ただ、なぜ間違えたのかについてどんな説明をしたのか、伝えられていない。
記事はその代わりに、専門家2人の解説を置いているが、いずれもバイデンには「信念」とか「哲学」のような一貫したものが欠けているというもの。混乱して誤った外交政策を唱え続けていると批判されている。
勿論、一貫していようがいまいが、米国の好戦的な外交政策は歓迎しないけれど、米国国民からすれば、バイデンを政治的リーダーとして押し上げるには不安がつきまとうだろう。
米国の有権者は、「鼻を摘まんでバイデンに入れる」ということになるのだろうか。
image by : shutterstock
新聞には見えない文脈が潜んでいる……朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を徹底比較、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜から金曜まで毎朝9時をメドに【ショートバージョン】を、その後、夕方までに【フルバージョン】をお届け。読み手は「吉田照美ソコダイジナトコ」(文化放送)や「スーパーニュース・アンカー」(関西テレビ)でコメンテーターを務め、現在はネット上のテレビ局、『デモクラTV』の内田誠。
有料メルマガ好評配信中
貼り付け終わり、
*おいらは新聞を取ってないので内田さんの比較記事を興味深く拝見いたしました。
« ◆はちみつが初期の風邪や咳に有効(英研究) l ホーム l ◆新型コロナウイルス感染症:ワクチンは絶対に打つな! »