――物理・IT・電気的宇宙論の専門家、平清水九十九が解説!
量子力学といえば、大学の専門研究者でなければ理解できない、物理学の中でも難しい学問領域と思われている。半導体開発で用いられ、相対性理論と合体して、宇宙論、重力理論にも拡張された分野だ。相対性理論がアインシュタイン一人により創り上げられたのに対して、量子力学は大勢の科学者が世界最高の知恵を持ち寄って発展させた。だが、大勢が関わったから間違っていないのかといえば、そうでもない。じつはアインシュタインとノーベル物理学賞の湯川秀樹博士は量子力学が間違っていると知っていた。量子力学の歴史をたどり、どこでどう間違えたかを解説していこう。
■神はサイコロを振らない
アインシュタインが量子力学に反抗したとして有名な「神はサイコロを振らない」という台詞があるが、これは一体どういうことだろうか? 量子力学では自然現象を確率的な現象と捉える。シュレディンガーの猫として知られるパラドックスもそうだ。放射性物質を入れた箱にある仕掛けを作る。放射性物質が崩壊すれば、箱には毒ガスが流れ、猫は死ぬ。崩壊しなければ、猫は生きている、という仕掛けだ。一定時間後に猫は死んでいるのか? 生きているのか?
シュレディンガーの猫の解釈にはいくつかの見解がある。コペンハーゲン解釈では、箱を開けた瞬間、猫の生死が決定される。これは量子力学で使われる粒子を記述する波動関数という数式によるものだ。量子力学では物質は波の性質を持っている。放射性物質の崩壊と箱を開けるという行動が重ね合うことで、猫の生死を決定しているのだ。
シュレディンガーの猫のイメージ図。画像は「Wikipedia」より
量子力学のもうひとつの解釈が多世界解釈だ。これは箱を開けた瞬間、猫が生きている世界と死んでいる世界に分かれるというものだ。世界は箱を開けるといった節目ごとに複数の世界に分裂する。私たちはそのひとつの世界に生きているとされる。
コペンハーゲン解釈、多世界解釈では、量子力学の描く世界は確率的なのである。それに対してアインシュタインは、反抗して「神はサイコロを振らない」と言ったのだ。なぜ、アインシュタインは量子力学の確率的世界観に反抗したのだろうか?
■量子力学を決定した中性子の発見
問題となるのは、原子核の構成物質である。かつて、原子核は陽子と電子で構成される核内電子説が優勢だったが、イギリスの物理学者チャドウィックが中性子を発見したことで状況が一変する。中性子の発見と同時にドイツの理論物理学者ハイゼンベルクは、核内電子説を廃棄し、現在の原子核―陽子と中性子を発表。それ以来、原子核は陽子と電子ではなく、陽子と中性子から出来ている、と見なされるようになったのだ。
しかし、ハイゼンベルクの論文を読んだ湯川博士は、メモ書きに「原子核内部にある電子を否定することは妥当なのだろうか?」と書き残している※。
現在では常識になっている原子核の構造に湯川博士は疑問を抱いていたのだ。
■電子は雲になった
量子力学は1913年に発表されたボーアの原子模型を満たすために考えられた。ボーアの原子模型は、プラスの電荷を持つ原子核の周囲をマイナスの電子が回っているという構造を持つ。通常ならプラスの原子核にマイナスの電子が引きつけられ、落下してしまうが、なぜ、電子は原子核に落ちていかないのかを説明することが量子力学を誕生させた。
1924年、フランスの物理学者のド・ブロイは、原子核周囲の電子は波の一種であるとする論文を発表した。粒子の波動性を指摘したこの論文は、「ド・ブロイ波」と呼ばれている。電子を波として記述するのに使われたのが波動関数だ。波動関数は19世紀に発達した熱力学―統計力学で使われていた数式で、多数の粒子をまとめて統計的に扱うために使われていた。
また、熱力学の成果に「空洞放射」と呼ばれる製鉄所の炉の内部の温度を計測するために考案された方程式があった。通常、熱の温度は連続していると考えられていた。しかし、熱力学が導いた炉の温度を表す方程式は、波長の整数倍の値をとるのだ。飛び飛びの値をとる“量子”という概念がここで誕生した。量子はボーアの原子模型で、電子の軌道が飛び飛びの半径を持つことと合致した。
ド・ブロイ波は、このようにして受け入れられ、量子力学の基礎となった。現在では、ド・ブロイ波は、原子核周囲の電子は、雲のような状態で存在していると解釈されている。量子力学の根本には熱力学が存在するのである。
※「要するにこの論文の特徴は核Electron (核内電子)の問題に関係した難点を Neutron (中性子)自身に押しつけて了って、核が Proton(陽子)、Neutron(中性子)のみより構成せられるという考えが原子核の安定性に就いて定性的に如何なることがいいうるか考察したるものであって、核内に於いては electron(電子) の存在を否定することが果して当を得て(い)るかどうか、にわかに判断することが出来ないが、核を構成する単位粒子の間の相互作用がもっと明らかにされぬ限り、この論文の程度の漠然たる推論で満足する他ないであらう」(京都大学より)
■量子力学は根本から間違っている 画像は「getty images」より
ここでもう一度、アインシュタインに戻ろう。アインシュタインは1905年に「光量子仮説」を発表している。金属に光を当てると電子が飛び出してくる光電効果を、光が粒子であると仮定して説明したものだ。光が波と粒子の両方の性質を持つことも、電子がド・ブロイ波であるとする解釈を助けている。じつは相対性理論で知られるアインシュタインだが、研究生活の大部分は熱力学の研究だった。量子力学が成立する以前の19世紀は熱力学が物理学の主流だったからだ。
だが、アインシュタインは、熱力学で使われていた統計学的手法である「波動関数」を1個の電子に適用するド・ブロイ波に違和感を抱いていたのだ。1個の粒子に多数の粒子を扱う統計を当てはめるのは、いかがなものか? これが「神はサイコロを振らない」という台詞の真実だと筆者は考える。つまり、1個の電子を統計的に捉えたために、不確定性原理やシュレディンガーの猫といった量子力学の矛盾が現れたといえるだろう。
また、湯川博士が直感していた原子核内部の電子の存在は、20世紀末に発見された低温核融合で顕在化してきた。低温核融合では中性子は陽子と電子の複合粒子と考えられている。原子核は陽子と中性子から出来ているとされるが、中性子は陽子と電子が結合したものなので、原子核内部には電子が存在するのだ。
■マクスウエルの勘違いが全ての元凶
原子核内部に電子が存在することで、どのような影響があるだろうか? 現在の物理学では、プラスとマイナスの電荷は途中で中和するとされる。原子核内部に電子があっても、陽子の電荷と中和するので、マイナスの電荷は外に出てこないと考えられる。
しかし、電荷が中和するというイメージは、19世紀の科学者マクスウエルの考えた電磁方程式に由来する。マクスウエルは19世紀の大実験家ファラデーのノートから4つの方程式を導いたが、そのときファラデーの考えていた電荷のイメージを間違えてしまった。マクスウエルも熱力学を研究していたからだ。熱は発散する途中で温度が中和していく。この熱のイメージを電荷にも適応させてしまったのだ。ファラデーの電荷のイメージは、プラスとマイナスは途中で中和することなく、独立して対象に届き、対象の物体内部で電荷の及ぼす力のベクトルが合成される。これが本来の電荷―クーロン力なのだが、中和するとマクスウエルは捉えてしまった。
原子核内部に電子が存在するということは、軌道上の電子には、陽子のプラスと原子核内部の電子によるマイナスの力が働く。軌道上の電子はプラスに引きつけられつつ、マイナスに反発することで、ゆるく軌道上につながれている状態だ。電子は雲ではないのだ。このメカニズムなら、ボーアの原子模型も満たすことが出来る。
原子核は複数の陽子が電子によって結合されている。これは湯川博士が抱いていた原子核内部の電子の存在―中間子と矛盾しない。現在では、宇宙線の観測から中間子はミュー粒子を経て電子に崩壊することが分かっている。中間子は電子がエネルギーを得て励起した(大きくなった)状態なのだ。
現在、原子核内部に電子が存在することを理論としたSAM(structured atom model)がアメリカのエド・カール氏により発表されている。
SAMは電気的宇宙論における物理学の中心として注目されている。量子力学は確立された学問領域として多くの人に信じられているが、21世紀に生き残ることができるかは定かではないのだ。
文=平清水九十九氏
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