いずれにしろ、宇宙の膨張率を正確に知るためには、加速率も正確に計測する必要が出てきた。しかし、これは途方もなく困難な仕事であると米・シカゴ大学の天文学者バリー・マドアー氏は語っている。それはまるで、「競馬場で走っている馬を一瞥して、馬がどこから走り出したのか、どの馬が勝つのか当てるようなもの」だという。
だが過去10年、ビッグバン後の残照である宇宙マイクロ波背景放射などをもとに科学者はこの困難に立ち向かってきた。そして今年7月の研究では、先ほどの2つの数値の中間になる69.8 km/s/Mpcというプランク定数が弾き出された。
だがマドアー氏によると、まだ考慮すべきことが多く、この数値が完全に正しいとは言えないという。ハッブル定数問題は必ず解決されなければならないが、まだ時間がかかるとのことだ。
一方、宇宙は加速膨張していないと考える科学者もいる。スペイン・バスク大学のホセ・セノヴィーリャ教授らによると、加速しているように見えるのは、実は時間そのものが減速しているためであり、今よりも時間経過が速かった過去の超新星爆発を観測したために起こった見かけ上の現象に過ぎないというのだ。
空間が膨張しているのか、時間が遅くなっているのか……決着は今後の研究に委ねたい。
参考:「Space.com」、ほか
編集部