■ナチスが人類初の月面進出を果たして月面基地を建設
いわゆる“潮汐ロック(ちょうせきろっく)”によって月は地球に対して常に同じ面を見せていることから、月には地球から直接観察できない“裏側”が存在している。もちろんNASAの月探査衛星などで月の裏側の調査は鋭意進められており、昨年には中国の月面探査機「嫦娥4号」が人類史上初の月の裏側への着陸を達成し、今後の本格的な調査が期待されている。
それでも“表の顔”に比べればまだまだわからないことが多い月の裏側だけに、これまでにも多くの仮説や臆測、そしてあらゆる陰謀説が登場している。それらの理論には人類の詮索好きな視線を避けて建造されたエイリアン文明の拠点があるとする説や、極秘裏に月面基地を建造している完全極秘プロジェクトの存在など多岐にわたっている。
それら陰謀論の中にはかなり具体的なものもあり、その中の1つにナチスは第二次世界大戦終結前に人類初の月面進出を果たし、その後、月の裏側に月面基地を造ったのだとする主張がある。
ナチスが月の裏側での基地建設に成功したと信じる人々は実のところかなり多いといわれていて、アドルフ・ヒトラー率いるナチスが1942年に人類初の月面着陸を達成したという説もある。
“ナチス月面基地説”の支持者であるブルガリアの研究者であるウラジーミル・テルッツオスキー博士は、この理論を裏付ける証拠があると主張している。
テルッツオスキー博士によれば、ナチスのロケットと宇宙船が月面着陸に成功してすぐに、ドイツ軍は月面を掘削し、トンネルを築造しはじめたという。そして第二次世界大戦の終わりまでには、月の裏側にナチスの研究拠点となる月面基地を建設し終えたということだ。この説の支持者の中には、これらの施設が月面の氷河の下にあると主張する者もいるようだ。
オルタナティブ系メディア「Disclose.tv」の記事では、この“ナチス月面基地説”について多くの人はまったくあり得ない話として片付けるであろうが、その印象よりもおそらくは真実に近い情報であると指摘している。はたして月の“ダークサイド”にはナチスの基地があるのだろうか。そしてそれこそが、人類が月を“再訪”できない決定的な理由なのだろうか。
■今後の月面開発は急ピッチで進むのか
ナチスのものではないにせよ、何らかの月面基地があるとして、特に人類の月面進出を妨害しないのであれば、今後すぐにでも人類は月面基地の建設に着手できるだろう。
先に触れたように、昨年、中国は月の裏側に探査車を上陸させ、最終的に研究基地を建設することを目標に月面での4つの任務を計画している。中国の月探査計画で副総司令を務めている呉艷華(Wu Yanhua)氏は、中国に加えて、アメリカ、ロシア、ヨーロッパが現在、月面基地の建設計画を検討していると話している。
月面への“再訪”こそなかったものの、宇宙開発において人類がこの50年で成し遂げた業績は目覚ましい。巨大な国際宇宙ステーションが建設され、人工衛星は今は多くの異なる惑星を周回し、太陽系における既知の惑星のほとんどを撮影している。そしてご存じのように火星進出計画、月資源の民間開発まで話は及んでいて可能性は膨らむばかりだ。
そしてナチスもまた秘密裏に存在し続け、宇宙開発において驚異的な進展を遂げ、一足先に月の裏側に秘密の研究基地を建設したということになるのだろうか。記事はその答えを示してはいないものの可能性は間違いなくあるのだと言及している。
もちろん多くの科学者は、1969年以前に誰かが先に月面に到達していたという主張をすべて否定するだろう。その一方でその主張を支持する声も数多い。そしてもしナチスの月面基地があり、今も機能しているとすれば、今後の宇宙開発で大きな脅威になるだろう。
2012年公開のSFコメディ映画『アイアン・スカイ』では、46年ぶりに月の裏側に着陸した人類がナチスの基地を発見し、国際社会とナチスの間で宇宙戦争が繰り広げられる内容だが、本当に月面基地があるとすればコメディでは済まない話になる。
さらにうがった見方としては、すでに世界の支配者層と月面のナチスとの間に“密約”が交わされている可能もないとは言えない。とすれば今後の月面開発において近々大きな進展が見られるかもしれない。月面のナチスの存在は隠蔽されたたままトントン拍子で月面開発が進んでいくとすればチェックを怠ることはできない。
参考:「Disclose.tv」、ほか
文=仲田しんじ