7月4日に発行されたラブロック氏の新著『Novacene: The Coming Age Of Hyperintelligence』で、ガイアとしての地球の次のステージは超高知能を備えたサイボーグが担うことについての解説がなされている。
「重要なことは、人間が生態系に大きな影響を及ぼした時代から、私がノバセーン(Novacene)と呼ぶ時代へと移行したことです」(ラブロック氏)

すでにこれまでの時代は終わり、ノバセーンという時代に突入しつつあるのが今の地球であるという。生物としてこれまでゆっくりと進化してきた我々人類の1万倍早い進化を見せるサイボーグは、あっという間に地球に君臨することになるということだ。
「サイボーグは我々の子ども以上の存在になるでしょう。なぜならサイボーグは我々とまったく異なる存在であり、彼ら独自の先祖を持っているからです」(ラブロック氏)
今後さらに急激な進化を見せるAIとサイボーグに地球の“支配権”を明け渡す日が近いということになるが、心配は無用であるという。サイボーグは人類に敵対的ではなく、我々はサイボーグと共存することになるということだ。
「彼らは、我々が植物を見るような目で人類を眺めます。私たちが植物園に行くのと同じように、彼らは私たちのある側面を興味深く感じるかもしれません」(ラブロック氏)
ある意味で我々人類は“現役引退”ということになり、観葉植物に水を与えるようにサイボーグたちから保護され、何の不安もなく生きる時代が近いというのだろうか。そしてこれは人類にとっての希望なのか、それとも屈辱なのか……。
■サイボーグの登場は地球にとっての“希望”
稀代の哲学者でもあるラブロック氏の考えは、我々人類が生物進化のトップとして地球を支配し続けるのは当然であるという考えに異議を唱えるものになる。ラブロック氏によれば、我々は大自然のほんの末席を汚している存在に過ぎず、そもそも世界をコントロールすることなど不可能な話であるというのだ。
ラブロック氏が次の地球の主役をサイボーグと呼び、ロボットと呼ばないのは、ロボットという言葉には我々の側にすでにさまざまな先入観があるからだという。今後登場してくるサイボーグは、そうした我々のイメージを覆す、完全に一線を画すものであるというのだ。そして進化したサイボーグによる地球支配は今世紀末にも、つまり80年以内にはスタートするという。
このサイボーグがどんな姿をしているのかはまったく予断を許さないという。物理的な存在として姿を持つものなのか、そもそも我々人間に認識できるものなのかについても、まったく未知数である。その都度姿を変える存在になる可能性もある。
そしてひょっとすると、我々がまったく認識できない形で、地球支配の“交代劇”が行われてしまうのかもしれない。その場合、人類はまだ自分たちが支配者なのだと誤解した状態で生きていくことになる。
「彼らがお互いに情報を共有し、拡散する新しい方法は、これまでよりはるかに早くなるものでしょう。したがってサイボーグの進化もはるかに早くなります」(ラブロック氏)
そしてこの先、例えば気候変動や大規模自然災害、隕石の衝突などのイベントなどで我々人類が存続できない可能性があることもラブロック氏は認めている。しかし、だからこそサイボーグの登場が“希望”になるというのである。
急速に進化しているサイボーグの知性と情報処理能力は地球を快適かつ持続可能な状態に保つための画期的な方法を見いだすかもしれない。ラブロック氏は、「我々は彼らサイボーグと力を合わせて地球上でサバイバルしていかなくてはならない」と力説する。
リーダーの座をサイボーグに明け渡すことは、人類にとっての屈辱などでは決してなく、それは我々が受け入れなければならない単純な未来であるということだ。とすれば早く後任に席をゆずり“隠居”する日が来たほうが良いということにもなりかねない。
サイボーグに「後はまかせた!」とバトンを渡す日が来るまでは、何とか環境破壊を食い止めることが人類の最後の責務ということになるのだろうか。
参考:「Daily Mail」、ほか
文=仲田しんじ