貼り付け開始

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14世紀半ばから19世紀半ばにかけて続いた、いわゆる「
小氷期(小氷河時代)」では、北極の氷河が大きく拡大した。カナダ、エルズミーア島ではティアドロップ氷河が氷の舌を長く伸ばし、大地やコケを飲み込んだ。
だが今や、地球温暖化の影響で永久凍土がとけつつある。その影響は大きく、氷に閉じ込められ、深い眠りについていた生物が目覚めはじめたのだ。
永久凍土がとけ、眠りから目覚めたコケの一種
コケの一種であるアウラコムニウム・トゥルギダム(
Aulacomnium turgidum)が眠りから覚めた。そのコケは色あせてちぎれているが、それでも緑色が残っている。まだ生きているサインだ。

A sample of the reawakened moss. (P. Boelen/BAS)
温暖化が話題になると、地球の生態系のもろさとセットで語られることが多い。たとえばある国連の報告書は、100万種もの動植物が絶滅の危機に瀕していると述べている。
だが中には例外もある。解けた氷のおかげで新たに命を吹き返す種がいるのだ。
温暖化の影響を大きく受ける北極では、ずっと昔に凍りついて死んだと思われていたはずが、ゾンビのように蘇るかもしれない生物が発見されている。
まさに驚くべき自然の柔軟性だ。
小氷河期を生き抜いたコケ
2009年、カナダ、アルバータ大学のコケの研究者キャサリン・ラ・ファージュ氏らは、ティアドロップ氷河が縮小したことで露出した、黒ずんだ植物を収集することにした。
その
目的は、この島の大昔の生態系の基盤だった植物を明らかにすることだ。
これまでそうした植物はすでに死んでいると考えられてきた。だが、緑の組織を目にした彼女は、「普通とは違うな」と感じたのだそうだ。
そこで、それらのサンプルを研究室に持ち帰って、暖かい場所で栄養たっぷりの土に植えてみた。
すると、3分の1近くが芽吹いて、葉っぱを広げたのだ。数世紀にわたる冬眠の悪影響はほとんど見られなかった。
乾燥することで氷から細胞を守る
凍りついた状態で生存するのは容易ではない。ギザギザとした氷の結晶が細胞膜などの大切な器官を切り刻んでしまうからだ。
多くの動植物は冬の寒さに勝てず、来るべき春に備えてタネや卵を残すことを選ぶ。
だがコケはもっと過酷な道を選んだ。気温が低下したら体を乾燥させ、組織の中で氷が形成されるのを防ぐことにしたのだ。
また万が一、部分的にダメージを受けたとしても、まるで人間の胎児の幹細胞のように、細胞をあらゆる組織に分裂・分化させることができる。
コケが凍った状態でも長く生きられるのは、こうした適応のおかげであるようだ。
氷河が生物を守っている可能性
こうしたラ・ファージュ氏の発見に続き、今度は英国南極観測局の生態学者ピーター・コンベイ氏らから、南極の永久凍土の1メートル下に眠っていた1500年前のコケが目を覚ましたと発表があった。
コンベイ氏によると、南極の永久凍土の下はとても安定しており、季節ごとの凍結・融解サイクルやDNAにダメージを与える放射線といった地上にあるストレスから守られていたのだろうという。
復活したコケが示しているのは、氷河や永久凍土は多細胞生物にとって単なる墓場などではなく、氷河期から守る役割をも担っているかもしれないということだ。
そして、人為的な気候変動によって南極と北極の氷がはぎ取られたおかげで、それを利用して今日まで生き延びてきた者たちが、新たに始まった極地の生態系で繁栄しようと準備を整えているのかもしれない。
氷が解けて大地がむき出しになると、一般には遠く離れた土地から風に乗ってやってきたタネによって植物の繁殖が始まる。そうしたプロセスはゆっくりとしたもので、ときに何十年もかかる。
だが、コンベイ氏らが発見したように、最初からそこで生き残っていた種がいるのならば、再繁殖は加速的に早まるだろう。
発見されたコケは荒涼とした風景を一夜で緑に塗り替え、他の生物たちが定着し繁殖するための足がかりとなる可能性がある。
約4万年の眠りから覚めた多細胞生物(線虫)
そうした氷河期の生き残りはほんの一握りのグループだけではない。
アメリカ・テネシー大学の微生物学者タチアナ・ヴィシネフスカヤ氏は、シベリアの永久凍土の地下からサンプルを集めて、数世紀前に生きていた単細胞生物の研究を進めていた。
それらの細菌をペトリ皿で蘇生させると、今日の低温環境で見られるものと非常によく似ていたという。
だが、彼女は昨年、さらに驚くべき
研究結果を発表した。永久凍土の下から脳と神経系を持つ生物が見つかったというのだ。そんな過酷な状態で生存しているなど、これまでの常識に反する発見だ。
当時、研究チームが探していたのは単細胞生物だった。永久凍土で数千年を生きられる生物など単細胞生物しかいないと考えられていたのだから当然のことだ。
ところが採取した凍ったサンプルをペトリ皿に入れると、妙なことが起きた。細菌やアメーバの中から、長く、体節のあるワームがぬっと現れのだ。その一端には頭部があり、もう片方には肛門もあった――線虫だったのだ。
その体長は0.5ミリほどだが、長期的な冷凍状態から復活したものとしては、これまでで一番複雑な生物だ。

ヴィシネフスカヤ氏の推定によれば、線虫の年齢は4万1000~4万2000歳。これまで発見された中で圧倒的に最高齢の動物だ。ネアンデルタール人の足元で蠢き、そして今、最新設備の研究所で現生人類に巡り合ったのである。
・4万2000年の眠りから覚め、永久凍土に閉じ込められていたワームが生き返る(ロシア・シベリア)※線虫注意 : カラパイア 休眠して、過酷な環境を生き抜く線虫
線虫は地球のいたるところで生存できる柔軟な生き物だ。
南アフリカの炭鉱からは地下3.2メートルという酸素に乏しく、それでいて高温な環境から線虫の群れが
発見されたこともあるくらいだ。

Gaetan Borgonie/University of Ghent
線虫の中には環境が悪化すると、「ダウアー」という状態になる種がいる。この状態では極端な環境から身を守るべく、保護シールドの形成が優先される。
ヴィシネフスカヤ氏が発見した永久凍土の中で眠っていた線虫が、ダウアーだったのかははっきりしない。しかし彼女は、その線虫は理論的には永遠に凍った状態でも生きられるのではないかと推測している。
時間を超えて生きる生物たち
こうした事実は、地球の生命の一員として喜ぶべきことだろう。
人類が引き起こした温暖化によって、多くの生物が絶滅の危機に直面している昨今だが、極地には解けつつある氷の中でとんでもない持久力を披露しているものがいる。
彼らなら、仮に我々には耐えられない環境が訪れたとしても、何食わぬ顔で命を繋いでくれるのではないだろうか。
渡り鳥から蝶やヌーまで、心身を削るような長い距離を移動し、新しい住処を見つる動物たちがいることはよく知られている。
だが最近の発見はまた別の距離、つまり時間を超える生物がいることを明らかにしつつあるようだ。
References:Ancient life awakens amid thawing ice caps and permafrost / written by hiroching / edited by parumo あわせて読みたい
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貼り付け終わり、
*強い生命力に感動しきり!
・地球温暖化説には不同意ですw
http://blog.livedoor.jp/genkimaru1/archives/2096766.html
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