投稿日:2018/04/27
昨今は美容鍼がブームだ。
これほどに美容鍼がブームになっているのは、
やはり美容鍼が絶大に効果を発揮し、
そのハッキリとした美容効果の結果を
クライアントたちが諸手を挙げて
称賛しているからと言えよう。
美容鍼はすでに一過性のトレンドを乗り越えて、
スタンダードなポジションを獲得したとみて
よさそうだ。
さて、ではあるが、その美容鍼がなぜ効くのかの、
原理的な作用機序に関しての説明をあまり聞かない。
これは飛行機が飛ぶ物理的原理がまだ証明されていないが、
すでに飛行機が長距離移動に欠かせないツールになっている
のと同じで、ようは効き目先行ゆえのエアポケットな
良くある現象と言える。
それで私なりに美容鍼の効果を科学的に説明すると、
ザックリと端的に言えば、これはヒートショックプロテイン、
とくにヒートショックプロテインHSP70が
大きく関与していると見ている。
例えばヒートショックプロテインHSP70を普通よりも
多く産生するHSP70過剰生産マウスを人為的に作り、
普通マウスとこのHSP70過剰生産マウスに同じように
紫外線を浴びせて、メラニン量を計測すると、
普通のマウスのメラニン量は増えるが、
HSP70過剰生産マウスではメラニンの産生が
抑えられることが実験でわかっている。
つまり私の仮説では美容鍼によって皮膚細胞で
分泌量が増したヒートショックプロテインHSP70が
作用することで、皮膚でのメラニンの産生を抑制し、
美容鍼が美白効果を発揮し、しみやくすみの原因を
抑制すると言えそうなのだ。
あるいはヒートショックプロテインHSP70には
DNA傷害を抑制し、DNA修復を促進する作用や、
炎症抑制、細胞保護などの作用もある。
こうしたヒートショックプロテインHSP70の
複合的な生理活性作用が美容鍼の治効効果の一端に
寄与していると私は見ている。
投稿日:2018/04/28
ヒートショックプロテインという言葉も
そこかしこで聞かれるようになった。
だがこの生体防御タンパク質の本質は
まだそれほど理解が進んでいない。
私は鍼灸指圧の治効作用に最も貢献している分子が
このヒートショックプロテインと見込んでいる。
それゆえにこれまでずっとヒートショックプロテインの
作用の本質を探る独自の探求を続けてきた。
美容鍼との関連では前回のコラムで
取り上げたヒートショックプロテインHSP70と、
今回取り上げるヒートショックプロテインHSP47に注目している。
このHSP47は実はコラーゲン専用のヒートショックプロテインで、
皮膚のコラーゲン繊維が正しい立体構造になるように
サポートするヒートショックプロテインなのだ!
紫外線や老化で皮膚のコラーゲン繊維の立体構造がゆがむ。
これがいわゆるシワやタルミの原因。
であるのなら、皮膚のコラーゲン繊維の正しい立体構造を
サポートするヒートショックプロテインHSP47の
分泌量を美容鍼や美容指圧で上げていけば、
結果としてシワやタルミの抑制や改善につながるとする
仮説が成り立ちそうなのだ。
ヘアレスマウスという毛がないマウスを使ったこんな実験がある。
ヘアレスマウスの皮膚を42℃のお湯に5分間浸けて温めると
HSPの分泌量が高まり、6時間後にHSP量が最大に達する。
それとはべつの対照マウスは37℃の温水処理をする。
そしてこの両方のマウスに同じように紫外線を当てた。
すると37℃処理のマウスにはハッキリとシワが出来たが、
42℃処理のHSP増量マウスには、シワはできなかった!
また肌のハリも同様の実験で調べたところ、
やはり37℃処理マウスの肌のハリは紫外線で低下したが、
42℃処理のHSP増量マウスの肌のハリはそのままに維持された!
この実験からHSPを増やすことで、紫外線によるシワや肌のタルミを
予防できることがわかったのだ!
HSP70過剰生産マウスを使った他の実験でも、
HSPが紫外線による肌のハリの低下や、シワの原因を
抑えることがわかっている。
これらを総合すると美容鍼や美容指圧は
ヒートショックプロテインHSP47や
ヒートショックプロテインHSP70の分泌量を上げることで
美容効果をもたらす、とする仮説が現実味を帯びてくる。
奇跡の50代とちまたで話題の美のカリスマ、
君島十和子さんも非常に熱いお風呂に浸かるのを
日課にしていると聞いた。
これを聞いたとき、ピンッと来るものを感じた。
アンテナの高い皆さんはすでに
ヒートショックプロテインの効能を知り
実践しているのかもしれない。
投稿日:2018/04/29
ここ2回のコラムでヒートショックプロテインHSP70と
ヒートショックプロテインHSP47の二つのHSPの
美容効果を特集した。
今回は次なるヒートショックプロテインとして
ヒートショックプロテインHSP32を取り上げる。
HSP32の特徴はひとことで言えば、
活性酸素を減らす作用だ!
HSP32は赤血球中のヘムという分子を分解し、
ビリベルジン、鉄、一酸化炭素の3種類の分子を作り、
この作用で細胞を保護する。
赤血球の主な役割は酸素を運ぶことだ。
酸素は細胞内呼吸にとって必須の分子ゆえに、
血液中の赤血球がヘモグロビンで酸素を吸着して
全身の細胞に運んでいる。
だから酸素と最もよく接しているこの赤血球が
もっとも酸化ダメージに曝されているのだ。
その赤血球の酸化ダメージを抑制するのが
ヒートショックプロテインHSP32の役目と言えるだろう。
細胞内にもとから備わる抗酸化ヒートショックプロテイン、
それがヒートショックプロテインHSP32だ。
ちまたではアンチエイジングには抗酸化物質を摂取せよ、
の大合唱が鳴り響いている。
だが、ちょっと立ち止まって、
自分の細胞内を観察すれば、そこにはちゃんと
みずからのちからで抗酸化をおこなう分子が備わっているのだ!
ヒートショックプロテインはその言葉通り、
熱ショックにより増える分子だ。
その熱ショックとは、
通常体温よりも高い42℃から50℃の
急激な温度変化を指す。
42℃というとちょうど温灸を皮膚に当てた温度。
50℃というのは直接灸の温度が筋肉層に達する温度。
まさに灸治療とはヒートショックプロテイン治療なのだ。
もちろんヒートショックプロテインは
熱ショックだけで増えるわけではない。
ストレス防御タンパク質のいわれの通り、
あらゆるストレスで傷ついたタンパク質を修復する。
鍼治療や指圧治療による圧力ストレスは、
ヒートショックプロテインを誘導できる。
美容鍼、美容指圧のみならず、
鍼灸指圧の本領とはヒートショックプロテインを旺盛に
誘導できるところにある、と私は仮説を立てている。
抗酸化アンチエイジングの秘宝は細胞内にある。
その秘宝を引き出すのが鍼灸指圧だ。